2024年04月24日( 水 )

従来型から脱却した医療経営 地域とつくる医療ネットワークとは(後)

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医療法人社団如水会 今村病院
理事長・院長 今村  一郎  氏

 佐賀県鳥栖市で45年以上にわたって地域医療に携わる医療法人社団如水会 今村病院。超高齢化社会を迎える2025年問題や独自の企業経営としての角度から、急性期病院への転換、ほかにない医療施設サービスの提供や雇用体制の導入、エリア連携による地域医療の新しい事業形態をつくり上げようとしている。

企業経営の視点から組織を再編、地域とも連携

 ――医療施設というより、一般企業の労働環境の考えですね。

 今村 一般的な組織管理関連の書籍は多く読みましたし、一般企業の方の考えは参考になります。以前はそうした企業の経営者が集まる勉強会などにも参加しておりました。私自身を監査・指導をしていただけるよう、元佐賀県医療統括監や一般企業の経営者を顧問に招聘しています。私は理事長という立場ですが、できるだけスタッフとのコミュニケーションの時間も大切にしたいと思っています。

 ――地域医療に注力されていますが、超高齢社会においてどのような医療が必要だと考えますか。

 今村 医療と介護の連係が重要です。当院に来られる患者の多くは高齢者ですし、先ほども申し上げましたが介護事業もしておりますので、これからはより地域の開業医や医療施設と連携を取っていかなければなりません。

 そこで、質の高い医療を効率的に提供すべく、厚生労働省が主導する「地域医療連携推進法人制度」を活用しているのです。これは、医療機関相互間の機能の分担・連携を推進するため、複数の医療機関などが参画できる新たな制度です。活用を思い立った背景は、当院が発表した統計調査です。2017年時点で佐賀県東部地区の高度急性期の病床数は当院の8床しかなく、25年までに31床が必要と試算しました。そのため、佐賀県東部地区に拠点を置く医療関係者に、救急医療の連携とレベルアップのため、人的・物質的資源を集中させることの必要性を提案させていただきました。関係者からも了解を得て、今年から同制度による連携・ホールディングス化を推進していくことになりました。

地域に根ざした医療のモデルケースへ

 ――医療ツーリズムとそれにともなう設備投資、健康に関わる活動にも積極的だとお聞きしました。

 今村 医療ツーリズムは16年から始めて、月30~50名ほど来られます。来院される外国人はすべて中国人で、中国にネットワークを持つ旅行関連企業とともに私が2カ月に一度、中国の上海、天津、山東省などにも行きました。CTやMRI、超音波内視鏡カメラを導入し、このほか遺伝子検査などの検査も行っています。CTは320列面検出器を搭載しており、従来のCT装置に比べ、検査時間が非常に早く、身体の内部をより細かく検査できます。また、造影剤の量や被ばく線量も半減できるため、身体への負担が少なく、かつ安全に診断できます。内視鏡については、超音波内視鏡を導入しており、従来設備では発見が3割以下と難しい膵臓がんも、超音波内視鏡では約8割の確率で発見できます。

最新鋭のマルチスライスCT装置

 ――ほかに病院・医療施設では珍しい取り組みはございますか。

 今村 佐賀県が推進している「さがスポーツピラミッド」という取り組みで、スポーツ選手の雇用をサポートする「SSPアスリートジョブサポ企業」として参画しております。昨年からパリ五輪を目指している太宰府市出身のライフル女子選手と地元鳥栖市出身の陸上女子短距離走の選手2名をリハビリテーション科で雇用しています。

 ――これから今村理事長がどのように医療事業を展開していくのか、考えや展望についてお聞かせください。

 今村 医療は進歩しますし、我々にもまだできることがたくさんあると思っています。地域のニーズに即した提供体制を構築したいと思っています。一般的に、病床の稼働率は約80%といわれていますが、当院はベッド数が足りない状況です。このような問題も、地域医療連携により解決できる可能性があります。

 これからの医療は、より地域ぐるみでやっていかなければ、事業としても厳しくなっていくと思っています。また、高齢化が加速するにあたり、医療を通じて患者さまだけでなく、ご家族の方のサポートも見守れるような地域生活が送れる社会にできればと思っています。そのために、どこにもない、この地域ならではの医療サービスを提供するモデルケースとなるような事業経営を推進してまいります。

(了)

【小山 仁】


Information
理事長:今村 一郎
所在地:佐賀県鳥栖市轟木町1523-6
設 立:1974年4月
TEL:0942-82-5550
URL:http://www.josuikai.or.jp


Profile
今村 一郎
(いまむら・いちろう)
1968年生まれ。92年に久留米大学医学部卒業後、同大学病院第二外科に入局。93年に聖マリア病院外科、2005年九州大学病院第二外科に勤務後、08年から現在の医療法人社団如水会 今村病院に勤務し、09年に理事長に就任した。日本外科学会認定医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、日本外科学会 認定医・専門医・指導医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本超音波医学会 専門医、人間ドック専門医 日本医師会産業医・専攻医、健康スポーツ医。

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