2024年03月29日( 金 )

リニア開業に向けた「This is NAGOYA」な駅づくりとは?(前)

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 2027年のリニア中央新幹線(以下、リニア)開業に向け、名古屋駅周辺で新たなまちづくりが進行している。名古屋市は14年に「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定。東西駅前広場の再整備、都市高速出入口のフルIC化などに取り組んでいる。名古屋駅に乗り入れる名古屋鉄道(株)(以下、名鉄)も、17年3月に「名古屋駅地区再開発全体計画」を策定。駅沿いに立地する6つのビルを取り壊し、長さ400m、高さ160~180mとされる複合ビルの建設を進めている。リニア開業によって、名古屋に何がもたらされるか。名古屋駅周辺はどう生まれ変わろうとしているのか。

わかりにくい「迷駅」

名古屋駅東口。
中央にそびえるのがJRセントラルタワーズ

 名古屋駅は、9路線(JR東海、名古屋市営地下鉄、名古屋鉄道など)が乗り入れ、1日約129万人が利用する中部地方最大の駅。1999年に開業した高さ245mのツイン複合ビル「JRセントラルタワーズ」が、駅のシンボルだ。名古屋駅は、地元では親しみを込めて「名駅(めいえき)」と呼ばれている。だが、駅構内の動線上の段差が多く、路線乗換などがわかりにくいという課題があり、名駅をもじって“迷駅”と揶揄されることもある。

 東西の駅前広場は、自家用車やタクシー、バスなど自動車のための空間で占められている。駅を出るとモニュメントなどで遮られ、オープンスペースが少なく、まちへの見通しが利かないという課題がある。地元からは、日本有数のターミナル駅にしては、「風格や魅力に欠ける」という声も上がっている。

 名駅の地下には1950年代以降、段階的に拡張されてきた地下街が広がっている。整備された時期が異なるため、利用者の動線の確保が不十分で混雑するなどの課題を抱えている。名駅に乗り入れている市営地下鉄の東山線は、慢性的な混雑状態にある。

スーパーターミナル・ナゴヤ

 名古屋市は2014年、リニア開業に向けて「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定。駅前広場などの周辺開発の方針を打ち出した。構想のキャッチフレーズは「世界に冠たるスーパーターミナル・ナゴヤ」。中部地方ではなく、日本を代表するターミナルを目指すというのは、いかにも名古屋らしい。

 この構想では、次の10のプロジェクトを打ち出している。
(1) 都市機能の強化
(2) リニア駅周辺の面的整備
(3) わかりやすい乗換空間の形成
(4) 駅前広場周辺の再整備
(5) 東西ネットワークの強化
(6) 名鉄名駅再開発計画
(7) 高速道路とのアクセス性の向上
(8) 地区ごとの特色を活かしたまちづくり
(9) 名駅通の歩行者空間の拡充・駅へのアクセス性の改善
(10) ゆとりある地下歩行者空間の形成

 市は18年3月、この構想に基づき、名古屋駅周辺交通基盤整備方針を策定。(1) (2) (8) 以外の交通基盤関連の具体的な整備内容などを定めた。(3) (4) (10) については、19年1月に「名古屋駅 駅前広場の再整備プラン(中間とりまとめ)」を策定。基本コンセプトに「スーパーターミナル駅にふさわしい高い機能性の発揮」と「世界の目的地(デスティネーション)となる名古屋の顔(ランドマーク)づくり」を掲げ、「車中心」から「人中心」への駅前広場の再編を打ち出している。

 駅東側の駅前広場を、現在モニュメント「飛翔」があるロータリー交差点の中央付近まで広げ、1万4,000m2ほどに倍増する歩行者空間を確保。駅からそのまま歩いてまちに行けるようにするほか、大屋根の設置を検討する。現在混在しているタクシーと一般車のスペースについても、それぞれスペースを分ける。駅東側には、2カ所のバスターミナル(名古屋駅バスターミナル、笹島バスターミナル)があるが、駅周辺の道路上にバス停が散在するなど、利用しづらい面があった。駅西側の新たなバス乗降場を整備し、東西3カ所に集約。また、東西駅前広場内に計5カ所、路線乗換の拠点となるターミナルスクエアを整備する。

 駅前広場に「This is NAGOYA」が感じられる象徴的な空間形成を図る。河村たかし市長は、「ニューヨークの自由の女神やパリの凱旋門」を引き合いに出し、旅行者にとっての「目的地(デスティネーション)」になるようなインパクトのある場所にしたいと話している。現在、どのような空間にするかを検討中だ。
 (2)については、リニア駅舎整備にともない生まれる東西の駅上部空間を広場などとして活用するほか、周辺の開発なども誘導する。(5) については、慢性的に混雑している中央コンコースの南側に、駅東西を結ぶ通路を整備。構内のスムーズな動線確保のほか、他線への乗り換えのしやすさにつなげる。市交通局でも、東山線の混雑緩和のため桜通線の利用促進策を検討する。(10) については、わかりやすく視認性の高い地下の歩行者空間や、ゆとりある地下広場の整備を計画している。

 「駅前広場の再整備などに当たっては、鉄道事業者、民間事業者などとの連携・協力の下で進めていくことが重要であり、関係各者との計画調整のプロセスを着実に行っていく必要がある。役割分担の整理も不可欠だ。これらをいかにスピーディにやるか。それが今後の課題になる」(丹羽克昭・名古屋市住宅都市局リニア関連都心開発部リニア関連・名鉄周辺開発推進課長)と指摘する。

 都市高速道路から名駅へのアクセスも改善する。名駅周辺には、名駅入口を始め、いくつかの都市高速の出入り口があるが、現在の出入口は、栄・伏見地区を向いた出口配置で、都市高速から名駅に向かうには、Uターンや迂回が必要で、不便な状況にある。名駅入口がある都心環状線は時計回りの一方通行路線のため、名駅方面から乗り入れ、南に向かう車は、いったん北側に迂回する必要がある。これをショートカットするため、丸田町JCTに西渡り線、南渡り線を整備するほか、栄出入口を設置する計画だ。

 駅東側に近い新洲崎JCTにも、新たに出入口を設置する。5号万場線黄金出入口は現在、都心環状線方面からの出入口しかないハーフICだが、千音寺方面からの出入口を整備し、フルIC化。駅西側へのアクセスを改善する。

(つづく)

【大石 恭正】

(中)

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