2024年03月28日( 木 )

厳しさ増すパチンコ業界~ホールの生存戦略とは(前)

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パチンコホール(以下、ホール)の経営環境は厳しさを増している。2018年2月施行の「改正風営法」による遊技機への規制強化に端を発した遊技人口の減少加速は、ホールの統廃合に弾みをつけ、大手ホールによる市場の寡占化を招いた。こうしたなかで、20年4月1日に施行された「改正健康増進法」への対応や、21年1月末を期限とする「新基準機への総入れ替え」など、費用負担が先行する現況は、中小規模のホールにとって企業存続をかけた“勝負所”だ。各社が選択する生存戦略とは――。

1万店舗を割り込んだパチンコホール

 改正風営法が2018年2月に施行され、パチンコ・スロットの射幸性が抑制された。変わらない投資額と、目減りした見返り。圧倒的不公平感から、パチンコ愛好家はホールから遠のき、呼応するようにホール数も年々減少している。19年には9,639店舗(【図1】参照)となり、ついに1万店舗を割り込んだ。市場規模の縮小を受け、ホールの統廃合が進んだことも一因と考えられる。

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 ホールの統廃合が進む主な理由は、市場の将来を悲観した遊技事業からの撤退や、後継者不在を理由とした廃業。ホール間の買収や店舗譲渡にある。

 大手ホールによる買収では、17年の「P-ZONE」買収劇が業界内で大きな話題となった。買収したのは「D’STATION」を運営するNEXUS(株)(群馬県高崎市)。同社の19年6月期の単体業績は売上高2,608億円、経常利益67億円。グループ会社で、旧P-ZONE12店舗の運営を引き継いだ(株)パラダイスの業績を含めると、売上高は3,263億円に上り、単体、連結とも増収基調で推移している。買収による拡大戦略は奏功しており、今期の連結売上高3,600億円という目標設定が、現実味を帯びてくる。

 このように、関東圏に拠点を置く大手ホールが、地方のホールを買収するというのが、統合の主流となっている。地場ホール間の買収交渉も「後継者不在とのことで話は来ています。駅近の良い立地ではありますが、今後の市況を考えると、営業利益5年分ではおいそれと手は出せません」(ホールA)と、話は出回っているようだが、実際に商談が成立するケースは稀な様子だ。

 しかし、19年後半から20年3月にかけてこの流れに変化の兆しが現れた。全国でパチンコホール「メガガイア」などを150店舗以上展開する(株)ガイア(東京都中央区)が、メガガイア店舗を立て続けに売却。売却先には、対象店舗の近隣エリアで存在感を示す地場ホール運営業者が名を連ねており、地方のホールが関東圏を拠点とする大手ホールから店舗を譲受するという流れが生まれている(【表1】参照)。

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 M&Aによる拡大戦略が活発化するなか、新規出店による成長を目指す企業もある。(株)SB Good Industryが運営する「シルバーバック諫早西店(パチンコ・スロット設置台数851台)」、(株)善都が運営する「ZENT豊橋藤沢店(同1,040台)」、(株)フェイスグループが運営する「MEGA FACE1250田川店(同1,250台)」など、規制強化後も設置台数800台超の大型店舗は誕生している。進出エリア内における最大規模店となることで、周辺で営業する中小規模ホールを駆逐し、遊技需要の集約と地域市場の寡占化を図っているのだ。新規出店するならば、大型店舗でなければ勝負できなくなっているともいえる(【表2】参照)。いずれにしても、大型店舗を新規出店する、あるいは買収できる体力のあるホール運営業者だけが、細る遊技市場のメインプレイヤーとして生き残っていくのだ。

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(つづく)
【代 源太朗】

(中)

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