2024年04月20日( 土 )

コロナ禍に巻き込まれた国内スポーツ界のこれから(前)

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 人類を恐怖に陥れる新型コロナウイルス。国内外での感染拡大は今も続いている。世界各国において国難である「コロナウイルス禍」は、政治、経済、商業、教育へ甚大な影響を及ぼしている。何より国民1人ひとりの健康、そして生命への不安は、日々増すばかりである。そんななか、国内外のスポーツ界においても先の見えない苦難が続く。つまり、プロ・アマとも活動再開のメドはまったく立たない。今後の活動再開のみならず、チームの存続、そして選手生命が窮地に立たされる可能性がある。

スポーツ界でも感染発生

 (公財)日本サッカー協会(JFA)会長・田嶋幸三氏が3月17日に、新型コロナウイルスの陽性反応が出たことを発表。その後入院し、現在は退院して療養中である。そして3月27日に(一社)日本野球機構(NPB)の阪神タイガース所属の藤浪晋太郎、伊藤隼太、長坂拳弥の3選手が同ウイルスに感染したことが明らかになった(その後入院→すでに退院)。これらの報道は、国内サッカーおよび野球界のみならず、国内スポーツ界に激震をもたらした。その後、野球解説者の梨田昌孝氏、片岡篤史氏が同ウイルスに冒され、現在も入院し闘病中だ。

 そのほか、Jリーグ、Bリーグ、ラグビートップリーグの選手や関係者、大相撲の力士のなかにも、同ウイルスの感染者がでた。Jリーグは、J2ザスパクサツ群馬・舩津徹也、J1ヴィッセル神戸・酒井高徳、セレッソ大阪・永石拓海が感染。Bリーグは大阪エヴェッサの選手11人(実名非公表)、ラグビートップリーグの三菱重工相模原ダイナボアーズの選手(実名非公表)の感染が明らかになった。直近ではNPBの読売ジャイアンツの球団職員の1人が感染していたことが発表された。

 とくに前述した片岡氏が自らのYouTubeチャンネルにて、闘病中の様子とコメントを映像で発信した姿は衝撃的であった。引退しているとはいえ、野球界のトップで長年活躍したアスリートである。その日々の鍛錬は常人の想像を絶するものである。その屈強なアスリートが苦しんでいる様子に、同ウイルスの恐ろしさを改めて思い知らされた。

 海外主要スポーツ界でも、同ウイルスの感染者が続出し、各競技をマネジメントする連盟や団体は対応に奔走している。学生スポーツなどアマチュアスポーツ界においても、同ウイルスの感染状況については不透明である。

 冒頭で述べた国内プロスポーツおよび海外スポーツ界の現状を冷静かつ客観的に見ると、とてもリーグ戦、大会、そしてチームでのトレーニング再開を実現できる段階ではないことは誰もが理解できる。

公営競技は開催中も

 他方、競馬、競艇、競輪、オートレースは、条件つきながら開催している。各レース場への観客動員は中止し、無観客での開催となっている。また、各レースへの投票について場内外券売所は現在閉所し、インターネットなどでの投票のみである(各競技団体の判断で、レースの中止を行うケースも出ている)。

 公営競技の開催については賛否が分かれている。公営競技が開催されることにより、各レースの投票金の5~10%が国や地方自治体の財源となる。つまり、開催することで国と自治体の財政の一助となるのだ。現状の国内財政情勢を考慮すると、開催すべきとする賛成側の根拠は理解できる。しかしすでに、日本中央競馬会(JRA)のスタッフ3人、岡山県の玉野競輪場で選手1人が新型コロナウイルスに感染した。無観客開催で一般人への感染リスクは解消されているものの、選手およびレース会場のスタッフの感染リスクは拭えない(JRAは、騎手の感染リスクを軽減するために土曜日、日曜日で異なる競馬場へ移動しての騎乗を認めない方針を打ち出している)。

 日本競馬界の第一人者で日本騎手クラブ会長の武豊氏は、「競馬は大事な娯楽で、今は自宅でもテレビやラジオなどを通じて楽しんでいただけています。そのためにも競馬を提供していかなければならないという気持ちを強くもっています。我々騎手だけでなく“競馬人”の皆がそう思っています。競馬の売得金(馬券の発売金から返還金を引いたもの)の一部は国に納付しており、こういうときにこそ意義を感じています。この状況だからこそ競馬を続け、安全対策を強化して、万全の態勢で困難な状況に立ち向かって乗り越えていかなければいけません。いいレースをするので応援してください」と開催意義についての声明を発している。この声明は、JRA以外の公営競技にも該当する。

 「ほかのプロスポーツは自粛しているのに、なぜ公営競技は開催するのだ?お金より生命だ!」という論評が存在する。事実、感染も発生している。だから、感染リスクを回避するためにレース開催を中止すべきという意見は正論である。それでも、武豊氏の声明通り、ファンからの投票金の一部は、国や自治体のために活用されることも事実だ。どちらが正解かどうかなど断定はできない。人間の生命第一の観点から、各公営競技のマネジメント側が冷静な判断を下すしかない。

(つづく)

【河原 清明】

(中)

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