2024年04月19日( 金 )

観光業界襲うコロナショック「希望は7月の4連休」

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 新型コロナウイルスはイベントの中止など“人の流れ”を止めた。旅行ポータルサイトやホテルなど観光業界への影響も多大なものとなっている。今回、旅行ポータルサイトを運営している各企業と各大手ホテル運営企業に電話取材を行った。

海外旅行は不透明

 「GWは諦めている」――観光業界は口をそろえた。緊急事態宣言が5月6日まで適用されていることもあり、少なくとも6月末までは観光需要は見込めないと見ているようだ。もちろん7月に市況が回復する見通しがあるわけではないが、7月23日から26日にかけての4連休に市場が動き出すか否かが、大きな局面であることは間違いないようだ。「7月の連休に向けて予約が入っているプランもあり、これだけが唯一の希望」と、イー・旅ネット・ドット・コム(株)の担当者は話す。コロナショックは、これまでの経験したどの不況よりもひどく、何よりも先が見えないことが旅行者の足を止めているようだ。

 7月の4連休の旅行プランは国内のみ。海外は企画したところで徒労に終わる。海外旅行は安心・安全に行うのが前提。現時点では収束したとしても、旅行者がどのようなトラブルに巻き込まれる恐れがあるかが不明のため、希望があっても対応できない状況だ。

旅行ポータルの対応

 新たなビジネスに取り組む企業も出ている。イー・旅ネット・ドット・コムの担当者によると、ある旅行ポータル大手は、提携先や取引先の地元企業を介して、各地に特産品の販売仲介を開始しているとのことだ。また、自宅で旅行気分が味わえるとして、VRを活用した仮想空間旅行の提供サービスの開発を進めている企業もある。

 一方で、「旅行」ではなく、新しい切り口でプランを提案している企業もある。goo旅行は「テレワーク応援プランがある宿泊施設」特集を組むことで、娯楽を目的とした旅行プランではなく、急速に普及するテレワーク環境を充実したものにする特集を組んでいる。エクスペディアでもやはり7月の連休を軸にしたプランを前面に出しており、同社担当者によると「7月に事態が収束しているか不透明なため、極力ホテルにはキャンセル無料のご協力をいただき、予約が埋まりやすい環境を整えている」とのことだ。また、公共交通機関で起こり得る“三密”を避けるためのプランとして、自家用車で行くことができる旅行プランも提供している。

 各社ともコロナショックへの対応を迫られているが、やはり7月が大きな転換点と見ているようだ。コロナショックによる影響が最も大きい業界の1つである旅行会社は、「大手であっても、9月のシルバーウィークまでは耐えられないだろう」と口をそろえる。また「積極的に広告を打ち出せない」と、無力さを噛みしめる声も聞かれた。

ホテルの開発は変更なし

 東京オリンピックや大阪万博などの大型イベントに備えて、ホテルの開発ラッシュが続いてきた。コロナショックの影響がどこまで続くのか先行きが見えないなか、開業時期の延期に踏み切るホテルも散見されている。あるホテル担当者は、「インバウンド需要が戻るのは、ある程度の時間がかかるかもしれない。コロナが収束したとしても、当初は国内利用者がメインになるだろう。まずは、休業している飲食サービスや結婚式場などをPRしていく」と話した。インバウンド需要を見込んだうえでのホテル開発だったが、当面は国内でいかに需要を増やすかが焦点となりそうだ。

【麓 由哉】

ホテルの対応

アパホテル

 全体的な韓国人訪日客の激減による影響あった。さらにコロナウイルスの影響でイベントの中止、国内出張を自粛する企業が増えたことで、各ホテルの稼働率にかかわらず、宿泊単価などの下落が進んでいる状況。また、新型コロナウイルス無症状者および軽症者をアパホテル&リゾート(横浜ベイタワー)、アパホテル(さいたま新都心駅北)、アパホテル(大阪肥後橋駅前) の3店で、一棟借り上げ方式によって宿泊療養施設として提供している。

阪神阪急ホテルズ

 日韓問題による影響はごくわずかで、さほど影響はなかった。東京、大阪の一部店舗の休業を決定した。休業決定時にはすでに予約なども入っていたが、同社広報によると「宿泊客と従業員の安心・安全を最優先した」とのこと。各休業時期は4月13日から5月31日までの期間となっている。

プリンスホテル

 日韓問題は限定的な地域で影響があったが、今回のコロナほどではない。4月8日より北海道、群馬県、東京都などの7店舗を、それぞれの同じ地区にある他店舗に集約するとして休館。そのほか秋田県、岩手県、長野県などにある7店舗を臨時休業としている。1回目の緊急事態宣言の対象エリア以外においても、休業・縮小を行っている。また、同社も東京都からの要請に応え、4月17日から東京都品川区にある品川プリンスホテル(イーストタワー)を、感染症の軽症者などの受け入れ施設として提供している。

京王プラザホテル

 日韓問題の大きな影響はなかったとみている。コロナの流行を受けてから序盤は訪日客のキャンセルが発生し、その後、国内での感染拡大の報道が進むにつれ、日本人の宿泊客も減少した。客室単価は、宿泊需要に応じて変動させている。緊急事態宣言を受けて、京王プラザホテル新宿・多摩・八王子では、レストラン、ラウンジ、宴会場を4月8日から5月6日まで休業している。

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