2024年04月19日( 金 )

インバウンド失速&コロナショック 苦境に立たされる九州・福岡の観光(前)

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中・韓依存の弱さ露呈

 これまでインバウンドなどの追い風に乗って急激に成長しつつあった日本の観光産業だが、ここにきて強烈な“冷や水”を浴びせられている。それは、大陸に近いという地理的な優位性から、これまでは中国・韓国を始めとしたアジア諸国からのインバウンド客で賑わっていた九州においても同様だ。

 観光庁の地方支分部局的な役割を担い、九州管内の観光施策を所管する九州運輸局観光部の発表では、2019年は日韓関係悪化の影響やクルーズ船の寄港回数の減少によって、18年には九州への外国人入国者数の約47%を占めていた韓国と、約33%を占めていた中国からの入国者数が激減。18年に約240万人いた韓国からの入国者数が19年には約170万人まで減ったほか、中国は18年の約170万人から19年には約130万人まで減少している。2国合わせると、たった1年で100万人以上も減っている計算だ。

 一方、ラグビーワールドカップ開催による欧米豪のほか、LCCの新規就航でASEAN諸国――なかでもタイやマレーシアからの観光客は増加している。だが、これまで計約8割を占めていた中・韓の抜けた穴は大きく、全体としては18年の511万6,366人から19年には422万2,026人と、約90万人も減少。これまでの“アジア――とくに韓国・中国に近い”という九州の地理的優位性が、完全に裏目に出たかたちだ。

“コロナショック”は観光にも大きな影を落としている。
写真は福岡県内随一の観光地である太宰府天満宮の参道の様子
(左:16年3月撮影、右:20年4月撮影)

かつてない苦難

 今年に入ると、状況はさらに悪化することになる。今まさに日本全国、そして世界各地で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の影響だ。

 九州運輸局の発表によると、九州への外国人入国者数は今年1月の28万9,487人から、2月には10万192人、そして3月は1万1,102人という落ち込みようだ(※1月分は確定値。2月・3月分は通常入国者数のみの速報値)。なかでも3月は前年同月比で96.7%減となっており、新型コロナの感染拡大にともなって国外からの旅行客がほぼストップしている状況だといえよう。だが、観光産業にとって今回の“コロナショック”が本当に怖いのは、こうしたインバウンドがもたらす影響ではない。外出自粛などを余儀なくされることによって、国内からの観光客すらストップさせてしまう点にある。

 実は九州、とくに福岡においては、宿泊者数に占める外国人の割合はそれほど高くない。19年の九州における延べ宿泊者数5,413万人のうち、日本人が4,645万人と全体の85.8%を占め、外国人は768万人と14.2%に過ぎないのだ。うち福岡県では、延べ宿泊者数1,670万人のなかで日本人は1,331万人(79.7%)、外国人は338万人(20.3%)という内訳だ。もちろんこれら宿泊者数にはビジネス利用なども含まれるため、純粋な観光客数というわけではないが、九州・福岡の観光客がインバウンドだけに依存していたわけではないことはいえるだろう。ただし、だからこそ、今回のコロナショックが観光業に与える影響は、昨年のインバウンド低迷の比どころではないのだ。

 今回、九州運輸局を始め、福岡県観光局、福岡市経済観光文化局に、現在の状況や今後の見通しについての見解をうかがった。いずれも「今の新型コロナの影響は脅威だ」としたうえで、それでも収束後には「観光は必ず復活する」「そのための施策を打っていかねばならない」という見方だ。現在の状況は観光業にとって、かつて味わったことのないほどの未曽有の苦難だといえるが、それでも、いずれ来たるべき復活のときを信じたい。

(つづく)

【坂田 憲治】

(後)

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