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2020年05月03日 07:00

新型コロナ感染拡大の裏で進むより深刻な脅威の数々(4) 未来トレンド分析シリーズ 

国際未来科学研究所代表 浜田 和幸 氏

 新型コロナウイルスが世界を席捲し、世界最大の経済大国アメリカも危機の瀬戸際に追い込まれている。だがコロナウイルス一色に染まっているニュースの陰で、より大きくかつ深刻な問題も起こっている。複眼的な問題意識をもって見なければ、足元をすくわれることになるだろう。危機が顕在化する一歩前に回避策を講じることが、何よりも欠かせない。

ヨーロッパに押し寄せる難民、数々の対策も焼け石に水

 さらなる迫りくる危機は、ヨーロッパに押し寄せる難民である。その最前線に晒されているのはギリシャに他ならない。2月28日、トルコは国境閉鎖を緩和する措置を発表した。そのため、陸路、海路を問わず、大量の難民が雪崩を打って押し寄せることになった。難民の発生源はシリアである。2016年、トルコはEU諸国との間で、食糧や財政援助との引き換えにシリアやその他からの難民を自国内で保護しEUへの流出を抑える協定を結んだ。

 しかし、シリア情勢は一向に改善せず、トルコにとっては500万人に達する難民の保護は限界を超えたようだ。「もうこれ以上、難民の保護はできない」とお手上げ宣言。その結果、続々と難民はギリシャを目指し始めた。もちろん、この流れはほかのヨーロッパ諸国にも波及することは目に見えている。

 危機的状況に陥ったギリシャでは国境を固め、難民を追い返すため、催涙ガスやホースでの散水を繰り返している模様だ。ボート難民が違法に侵食しつつあるギリシャ国内の島々では現金を支給し、出身国に帰国するよう促しているが焼け石に水の状態である。

 実は、シリアに限らずアフリカ、中東、南米、そしてアフガニスタンやミャンマーなどアジアでも難民が発生している。内戦や宗教的な対立に加え、自然災害の影響が大きく影を落としていることは間違いない。国連の推計によれば、全世界で1億人を超える難民が発生している。彼らが暮らす難民キャンプでは医療施設はいうにおよばず、水や食料もままならない。こうした劣悪な環境に新型コロナウイルスが発生すれば、その行く末は想像に難くないだろう。

 加えて、全地球的な危機としての温暖化が指摘できる。人類は1880年から気候に関する記録を取り始めた。アメリカのNASA(全米航空宇宙局)やNOAA(全米海洋大気庁)の報告によれば、20年2月の平均気温は1880年以来、2番目の高温を記録したという。北半球は異常に暖かい冬となり、とくにヨーロッパでは記録的に暑い冬場を経験した。

 何しろ、氷に閉ざされているはずの北欧ノルウェーでは1月に19度を記録したのである。これは過去の平均気温を25度も上回る異常気温であった。19年12月から20年1月、2月にかけて、ヨーロッパもアジアでも記録が塗り替わる異常な高温が続いたものである。こうした異常気象は北極の永久凍土を溶かし、これから各地の海面上昇を引き起こすことは避けられないだろう。

 これまでも水没が危惧される島しょ国家は数多く存在していたが、海岸沿いの大都市も安心できない。万が一、地震や津波が発生した場合には、東京や上海などは真っ先に飲み込まれるリスクに直面する。

 こうした数々の目前に迫る危機に対しても、我々はどこまで真剣に対応策を検討し、構築しているのだろうか。「自分だけは大丈夫」という根拠なき楽観論では「後の祭り」にならざるを得ない。世の中は「新型コロナウイルス一色」の感が無きにしもあらずであるが、危機は忖度してくれない。安易な思い込みで後々後悔しないように、危機意識のレーダーを研ぎ澄まし、危機が顕在化する一歩前に回避策を講じる発想と実行力が今こそ問われている。

(了)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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