2024年04月20日( 土 )

事業環境悪化にコロナが追い打ち~暗雲漂うブライダル業界(1)

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 近年、若者人口減少や未婚率の増加などで国内の婚姻件数が右肩下がりで推移するなか、苦戦を強いられているのがブライダル業界だ。そこに追い打ちをかけるように、今年に入ってから“コロナショック”が勃発。この影響で結婚式・披露宴の延期や中止が続出し、業界としては致命傷となりかねない事態に陥っている。業界各社はこの苦境を生き延びることができるのか――。

下げ止まらない婚姻件数

 日本の人口が、減少局面に入って久しい。総務省統計局の発表によれば、日本の人口は2008年の約1億2,808万人をピークに以降は概ね右肩下がりで推移しており、今年4月時点で約1億2,596万人。30年後の50年には人口1億人を割り込むと予想されており、このまま人口減少に歯止めがかからないというのが大方の見方だ。こうした人口減少にともない、同じく減少傾向にあるのが婚姻件数だ。

 厚生労働省の「平成30(2018)人口動態統計(確定数)」によると、日本の年間婚姻件数は1972年の109万9,984万件をピークに、以降は右肩下がりで減少を続け、87年には69万6,173件と70万件を割り込むところまで下がった。バブル期から一時は持ち直しの兆しを見せ、2001年には79万9,999件まで回復。しかし、翌02年からは再び減少傾向に陥り、11年には再び70万件を割り込んで66万1,898件となり、そして18年には58万6,481件と過去最低を更新した。この10年間を見ると、08年の72万6,106件から18年にかけて13万9,625件も減少しており、率にすると19.3%減と約2割も落ち込んでいることになる。その要因にはさまざまあるが、社会構造の変化にともない個人の価値観の多様化が進んだ結果、「結婚することへの意義」を見出せない層が増加したことや、かつて旺盛だった見合い制度が廃れてきたことで、半強制的にでも男女をマッチングさせる場が失われてきたこと、さらに、格差拡大によって貧困層が増加した結果、経済的な理由によって、したくとも結婚に踏み切れない若年層が増えたことなどもある。

 こうした婚姻件数の減少は、当然ながら結婚式や披露宴の件数にも影響をおよぼしている。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」では、結婚式場業における年間の挙式・披露宴の施行件数は、15年に8万8,590件だったものが、わずか3年後の18年には7万8,657件と約1万件も減少している。なお、19年は8万6,304件と再び大幅増加をはたしているが、これは同年の平成から令和への改元に合わせて結婚式を行う“令和婚”にともなうもの。いわば一時的なボーナスであり、これで減少に歯止めがかかったわけではない。また近年は、入籍はしても結婚式を挙げない“ナシ婚”や、挙げても小規模な式にとどめる“ジミ婚”を選択するカップルも増加。とくに経済的に余裕のない若年層を中心として、こうした傾向が顕著になってきている。

 その一方で、意外にも結婚式1件あたりの費用は増加傾向にある。(株)リクルートマーケティングパートナーズの「ゼクシィ 結婚トレンド調査」によると、10年に325.7万円だった結婚式の費用総額の平均は、19年には354.9万円まで増加。こうした費用増大の背景には、ハウスウェディングなどのシェア拡大にともなって“自分らしさ”の表現などのカスタマイズが可能になったことに加え、晩婚化――つまり初婚年齢の上昇によっておもてなしを重視するカップルが増え、招待客1人あたりの料理・飲み物などの費用が増加傾向にあることなどが挙げられる。前述の“ジミ婚”増加を考えると、費用面では二極化してきているといえよう。

 このように、結婚式・披露宴をめぐっては、どちらかといえば明るい話題に恵まれていない印象を受けるが、こうしたトレンドの影響を直接的に受けているのが、ブライダル業界だ。

(つづく)

【坂田 憲治】

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