2024年04月19日( 金 )

防災協定対象に公園・緑地も追加 官民連携による災害復旧(後)

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大規模自然災害に備え官民一体となった体制を

 今回の防災協定締結のきっかけとなったのは、近年頻発している大規模自然災害の数々だが、なかでも大きいのは、西日本を中心に死者200名を超える甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」――通称“西日本豪雨”だ。

 台風7号と、梅雨前線の影響にともなう集中豪雨によって、西日本を中心に河川の氾濫や洪水、土砂災害などを引き起こした西日本豪雨は、ここ福岡県でも広い範囲に被害をもたらした。福岡市内においては、7月3日の夕方から夜半にかけて、市の西側を北上するルートで台風7号が進行。市内でも最大風速20mを超える非常に強い風が観測され、それによって公園緑地や街路樹などで倒木などの被害が相次いだ。公園緑地では、市内の計101カ所で110本の倒木と59本の枝折れが発生したほか、公園内の照明灯の倒壊やトイレ屋根の破損などの被害が発生(【表2】参照)。また、街路樹では市内一円で倒木48本・枝折れ8本の被害が発生した。

 さらに台風通過後、7月5日から6日にかけて梅雨前線が九州北部に停滞。市内でも長時間にわたって記録的な大雨となった。それによる市内公園緑地の主な被害は、脇山中公園(早良区)と立花寺公園(博多区)で土砂崩れが起こったほか、特別緑地保全地区2カ所で土砂流出が発生。また、河川敷を活用した室見川緑地(早良区)などでは、河川の増水による護岸の崩壊や園路への土砂の堆積が見られた。さらに、西油山中央公園(早良区)では山水による広場内への土砂堆積や、かなたけの里公園(西区)で園路の一部破損などがあった。

 この西日本豪雨の際は、被災箇所が市内全域におよんだうえ、個々の被害も甚大なものが多かった。とくに前出の脇山中公園の土砂崩れでは、公園の擁壁が崩壊して道を挟んで隣接する民有地2軒に土砂が流入し、民有地内のブロック塀や自動車などを破損するという被害が発生している。箇所数も膨大で、市役所全庁を挙げての災害対応となったことから、改めて平時の準備の重要性を認識。これまで防災協定を結んでいた道路や上下水道などに加えて、今回の「公園・緑地」の防災協定にもつながったとされる。

 近年のような大規模自然災害が頻発する状況下、いざ公共インフラが被災した場合の復旧体制は、整えておくに越したことはないだろう。今回対象に加わった公園・緑地は、道路や上下水道などの公共インフラに比べると、市民の生活にとって直接的な影響の度合いは少ないが、だからといって被災による倒木や土砂などを放置すれば、それが敷地内を越えて新たな二次災害を生み出しかねない。災害時には市民の安心・安全のためにも、狭い領域だけで考えることなく官民連携で全体として、社会基盤たる公共インフラの復旧にあたっていくことが大切だといえよう。

2018年7月 西日本豪雨後の室見川緑地(早良区)
2019年7月 台風後の室見川緑地(早良区)

(了)

【坂田 憲治】


<INFORMATION>
(一社)福岡市造園建設業協会

会 長:古賀 正(古賀緑地建設(株))
所在地:福岡市中央区渡辺通5-24-30
設 立:1987年
会 員:39社

(一社)福岡市緑化協会
会 長:大橋 優((株)大橋造園土木)
所在地:福岡市早良区早良7-1-39
設 立:1994年
会 員:40社

福岡市住宅都市局 花とみどりのまち推進部
みどり整備課 課長 上田 裕貴 氏

 これまでは大雨や台風などで公園が被災した際に、その復旧がなかなか遅々として進まず、市民にとって不便な状態が続くこともありました。我々としても、これまでは「どう対応していけばいいのか」と悩ましい部分もあったのですが、今回の協定締結により、災害発生時にそれぞれの協会に迅速に対応していただける円滑なルートができました。災害での被災後にも早期の公園復旧が可能になったことで、市民サービスがきちんと提供できるようになります。非常にありがたいと思っていますし、協会のご協力はとても心強い限りです。
 行政だからといって、何でもかんでもできるわけではありません。それを補完する仕組みの1つとして、こうした防災協定があります。“皆で社会をつくっていく”という意味でも、今後もさまざまなかたちで官民連携を図っていきたいと思います。

(一社)福岡市緑化協会 会長 大橋 優 氏
((株)大橋造園土木 代表取締役)

 福岡市緑化協会は現在40社の会員を抱えています。当協会は各地域を知り尽くした事業者の集まりです。そのため、スピーディで小回りの利く対応が可能という利点をもっています。協会としては、これまでも市の“一人一花運動”の一環で空港通り(博多区)の沿道に花を植えたり、福岡城石垣の除草、舞鶴公園美化活動などの市内でのボランティア活動を陰ながら行ってきたほか、グリッピキャンペーンやガーデニングショーへの参加などを通じて、福岡市の緑化への活動を行ってきました。やはり我々が造園業として個々の企業活動を行っていけるのは、市民の皆さまあってのものです。協会としても従前より「市民の皆さまに何かお返しをしていきたい」「お役に立ちたい」と、市側に災害時復旧への協力などの打診を行っていましたので、今回の防災協定締結はとても喜ばしく思っています。
 公園は、市民の皆さまにとっては、日ごろの憩いの場としてだけでなく、災害発生時には避難する場所としての役割ももっています。協会でも今後、災害発生時の手順などをきちんと取り決めながら準備を行い、皆さまの安全・安心に向けて全力で取り組んでいきたいと思います。

(中)

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