2024年04月26日( 金 )

WHO総会が開催へ~「新型コロナ対策優等生」の台湾は今年も参加が認められないのか?

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 本日18日、WHO(世界保健機関)の総会が開催される。新型コロナウイルスの感染症の流行以降で初めの総会であり、新型コロナウイルスの感染を抑制するための国際的な協調が進むことが期待される。

 WHOのテドロス事務局が中国寄りの言動を繰り替えしていることに対し、米国のトランプ大統領がWHOを中国寄りであると批判し、資金拠出を停止する指示を出すなど、緊張が高まっている。他方で中国はWHOに追加で資金拠出を行い、WHOへの中国の影響力は高まっているとみられる。

 中国は「1つの中国」の原則のもと、WHOを含む国際組織への台湾の参加を認めないよう、組織および加盟国に働きかけている。WHOはこの件に関して、加盟国が決めることとしているが、中国との交流を促進した国民党・馬英九総統時代の2009~16年にオブザーバー参加が認められ、民進党の蔡英文総統になってから再び認められていないという事実からは、台湾を排除しようという中国の意向が働いていると勘繰られても仕方がない。台湾は1月に行われた新型コロナウイルスに関する緊急委員会にも招待されておらず、2月11日の緊急会合に参加したのみである。 

 WHOの台湾排除は、台湾とWHOを介した情報共有が不十分という問題を生んでいる。台湾がWHOに情報提供を行っても、加盟国に共有されず、逆も然りだ。台湾は新型コロナウイルスへの対応の迅速さ、効果において世界的に評価を得ており、台湾からの情報をより速く、より多く共有することは世界の防疫に役立つはずだ。

 そもそも、WHOは03年に台湾でSARS感染者が確認された際にも専門家の派遣が遅れ、台湾での被害を拡大させたことがある。新型コロナウイルスの感染という数十年に一度の事態において、再び公衆衛生よりも政治の論理、国のメンツを優先させるのであれば、その存在意義が改めて問われることになる。福岡市在住の台湾政府僑務委員・海澤州氏、西日本台湾学友会会長・庄野庸雄氏らが3月に台湾のWHOへの参加を求める要望書を事務局長のテドロス氏宛に送付しているが、その後もやはり反応はないようだ。

 日本は中台関係について「台湾は中国の一部であるという中国の立場を理解、尊重する」という立場であり、米国のように台湾関係法を定めているわけでもなく、中台関係に対しては細心の注意が求められるが、報道によると、米国などとともに台湾のオブザーバー参加を求める意向をWHOに伝えているという。台湾には2万人以上の日本人が居住しており、他人事ではない。WHOには彼らの健康に影響をおよぼさない体制づくりを求めたい。

【茅野 雅弘】

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