2024年04月18日( 木 )

中国外相が全人代で記者会見~香港への統制強化を正当化、米国からの新型コロナ損害訴訟をはねつけ

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 24日、全国人民代表大会(全人代)で王毅・国務委員兼外交部長(外相)による記者会見が行われた。外相の記者会見は全人代でとくに注目されるイベントの1つ。今年は新型コロナウイルスの影響などもあって米中の対立が深まるなか、より多くの注目が集まった。記者会見は記者が外相と別会場で参加するオンライン方式で行われた。

 米中間の争点は多岐にわたるが、今回の記者会見では、全人代直前に中国が提起した香港での国家安全法の制定をめぐって香港問題が再燃したことが最大の焦点の1つとなった。また、新型コロナウイルスの責任の所在および損害賠償請求などが新たな争点として取り上げられた。

香港デモ(2020年元旦)

 香港の国家安全法とは、香港の憲法に相当する香港基本法第23条が、中国政府に対する扇動、国家分裂、政府転覆などを禁止するために制定することを記載しているが、これまで市民の反発もあり制定されていなかった。21日に中国政府が制定する意思を発表した後、翌22日にはポンペオ・米国務長官が中国に再考を求め批判している。香港の民主派は週末の24日に大規模な抗議デモを行った。

 記者会見において、ロイター通信記者が、米国が中国に対して香港の貿易センターとしての特殊な地位の取り消しを含む報復措置をとり、それにより香港が世界の金融センターとしての地位を喪失してしまうのではとの懸念を伝え、投資家の心理をどのように安心させるのか王毅外相に問うた。

 王毅外相は「香港は中国の内政であり、外部からの干渉は受け入れない」「昨年6月の条例修正(民主派デモの引き金となった逃亡犯条例)“暴動”以降、“香港独立”組織と過激な分離勢力が猛威を振るい、暴力テロ行為が絶えずエスカレートし、外国勢力が違法に深く香港に干渉していることは、香港の安定と繁栄、一国二制度にとって大きな脅威となっている」と批判したうえで、「これは国家の安全に深刻な危害を加えるごく少数の行為を対象としたものであり、香港の高度な自治、住民の権利と自由、投資家の正当な権益には影響しない」と述べる。

 各国からの損害賠償請求に関する質疑(中国環球時報貴社)対して、王毅外相は「中国への訴訟濫用は、基本的事実に欠け、法律の根拠もなく、世界で前例もない、完全に三無産品(生産日、品質合格証、生産者名の3つが記載されていない製品を指す言葉)である」「責任追及と損害賠償を騒ぎ立て、証拠を偽造することは、国際社会の法治を踏みにじる」「訴訟濫用によって中国の主権と尊厳を侵犯するならば、それは白日夢であり、自ら恥辱を受けるものである」と強く批判する。

【茅野 雅弘】

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