2024年04月19日( 金 )

「スーパーシティ」構想で再注目 九大・箱崎キャンパス跡地のポテンシャル(後)

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事業者公募は20年度から JR新駅設置も検討

 周辺エリアも合わせると約50haもの広大な敷地をもつ箱崎キャンパス跡地の再開発をめぐっては、統合移転プロジェクトの進行中から注目が集まっており、これまで段階的に協議が進行。まちづくりの方針については「跡地利用将来ビジョン」(13年2月)で、土地利用の方針については「跡地利用計画」(15年3月)でそれぞれ策定された。そして18年7月、福岡市と九州大学は「跡地利用計画」を踏まえ、箱崎キャンパス跡地などにおいて、良好な市街地形成と新たな都市機能を導入するため、まちづくりに共通する整備ルールや将来の絵姿などを示すことを目的として、「九州大学箱崎キャンパス跡地グランドデザイン」を策定・公表した。

 グランドデザインでは、「福岡市基本構想」と「第9次福岡市基本計画」を上位計画としたうえで、これまで検討されてきたまちづくりの方針や将来構想をベースに、「まちづくりの基本的な考え方」として、「イノベーションを生み出す新たな拠点の創出」と「高質で快適なライフスタイルや都市空間づくり」の2つを設定。そのための要素として、多様な都市機能の誘導のほか、まち全体の一体感の創出、周辺地域との調和・連携・交流、環境と共生した持続可能なまちの形成―などが挙げられている。また、福岡市が進めるプロジェクト「FUKUOKA Smart EAST」の考え方も取り入れながら、快適で質の高いライフスタイルと都市空間を創出する、未来に誇れるモデル都市の創造に向けて取り組むとしている。

 事業スキームは、「北エリア」(約20ha)と「南エリア」(約30ha)の2エリアに分けて整備が行われる。市有地や公共施設が多い北エリアでは、福岡市による土地区画整理事業が行われ、貝塚駅の駅前広場整備や東西方向の連絡性向上などの総合的な交通結節機能の強化を始め、貝塚公園や箱崎中学校などの公共施設の再配置と移転跡地の活用などを実施。一方の南エリアでは、九州大学が早期の資金確保と適切な土地処分のため、UR都市機構による直接施行制度を活用した開発行為が行われる。事業者の公募は南エリアで20年度、北エリアでは21年度を予定しており、土地引き渡しは南エリア22年度、北エリア24年度以降となる見通し。

建物解体がほぼ完了した箱崎キャンパス跡地(20年5月撮影)

 一方で、跡地再開発の動きに合わせて、同地と市中心部との交通利便性をさらに高めるため、再開発にともなって移転する市立箱崎中学校の跡地などに、JR鹿児島本線の新駅を設置する案が浮上。19年10月には地元の九大跡地利用4校区協議会から、福岡市とJR九州に対して新駅設置などの要望書が提出された。現在、その実現に向けて市とJR九州、九州大学、UR都市機構の4者における検討が進められている。

 こうした開発の動きとともに福岡の財界からは、現在は博多駅筑紫口側の福岡合同庁舎に集積している国の出先機関を箱崎キャンパス跡地へと移転することも提案されている。地元の経済団体である福岡経済同友会によって17年に策定され、福岡市長に提出された意見書では、高度都市機能の受け皿としての箱崎キャンパス跡地のポテンシャルを評価。市内外に立地したほかの出先機関も同地へ移転・集積することで効率化が図れるとし、福岡県庁とも直線道路で結ばれることで、国・地方自治体の連携が円滑に進む効果も見込めるとしている。

 このように箱崎キャンパス跡地をめぐっては現在、単なる再開発の枠組みを越えたさまざまなプロジェクトが、複合的に絡み合いながら進行している状況にある。「スーパーシティ」構想を実現する国家戦略特区法改正案が5月27日に参議院本会議で可決され、成立となった。今夏ごろから自治体を募って選定作業が始められ、秋以降に全国で5カ所ほどエリアが指定される予定だ。その対象エリアとして箱崎キャンパス跡地が選定されれば、同地における再開発の動きは、また新たなステージを迎えることになるだろう。

【坂田 憲治】

(前)

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