2024年04月18日( 木 )

四国新幹線「ないのがおかしい」(中)

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JR四国の鉄道整備は100年前

 国土交通省鉄道局は3月31日、JR四国に対し、国土交通大臣名で「経営自立(最終的には株式の上場)」に向けた経営改善を求める文書を手渡した。主な内容は表の通り。

JR四国に対し、21年度から10年後(31年度)の経営自立を目指し、以下の経営改善に向けた取り組みを着実に進めることを求める。

(1)経営自立計画が未達となった原因の分析・報告
(2)令和2年度事業計画に記載した取り組みの実施状況について、四半期ごとに鉄道局とともに検証し、情報を開示
(3)10年間(令和3~12年度)の長期経営ビジョンおよび5年間(令和3~7年度)の中期経営計画の策定と、これらに盛り込んだ取り組みについて、四半期ごとに鉄道局とともに検証し、情報を開示
(4)外部の厳しい意見・アドバイスを経営に反映させる仕組みの構築
(5)5年間(令和3~7年度)の事業計画の策定、地域の関係者と一体となった利用促進やコスト削減などの取り組みの実施、あるべき交通体系の徹底的な検討、取り組み結果の毎年度の検証および最終年度(令和7年度)における総括的な検証の実施

 この要求を受けてJR四国は、厳しい経営状況に鑑み、さらなる経営改善のためには既存路線の廃線も含め検討する旨を言及した。この発言に対し国土交通省は、「文書では、2次交通も含めたあるべき交通体系について、徹底的な検討を求めているが、将来にわたって持続可能な交通体系を構築する観点から、効率的で利便性の高い交通サービスの在り方について幅広い検討が必要だとの考えに基づくものであり、廃線ありきではない」とクギを指す。

 JR四国の経営は、なぜボロボロなのか。波床正敏・大阪産業大学工学部都市創造工学科教授はJR四国が抱える“アキレス腱”について、次のように分析する。

 四国の在来線、とくに土讃線は線路がヒドい状況にある。他のJRの在来線は、高度経済成長期に複線化や電化などを行っており、その際、新たなトンネルや橋梁などを建設し、線路の付替えやバイパス線の敷設も行っている。ところが、四国の在来線は、最初の建設が遅かったこともあり、高度経済成長期に追加のインフラ投資がほとんど行われなかった。国鉄民営化前にかろうじて予讃線だけ電化されたが、電線を張っただけで線路の付替えなどは行われなかった。四国の在来線は、基本的に明治大正期に建設されたインフラを今でも使っているわけだ。「JR四国は100年前のインフラをいつまで使うのか」という話になる。

 四国の人間の多くは鉄道ではなく、高速道路を車で移動しており、鉄道の社会的な寿命はもう終わっている。今までの投資の流れで行けば、四国の在来線を電化、複線化するのがスジだが、トンネルや橋梁は物理的な寿命も近く、コスト的には新線を建設するのと大差ない区間が少なくない。どうせ投資するなら、在来線ではなく、新幹線のほうが合理的だ。

 つまり、JR四国は民営化された段階で、インフラ的に、いずれ経営的がもたなくなることが、ある程度予想されていた可能性があったわけだ。

岡山県の協力は「パンドラの箱」

参議院議員 西田 昌司 氏

 期成会では、国に対して新幹線建設予算の増額を要望してきているが、今のところ、約1兆円と試算される建設費用を確保できる見通しは立っていない。期成会に名を連ねる地元自治体が、地元負担に実際に応じるかも不透明だ。この点、千葉会長は「思い切った発想の転換が必要ではないかと考えている」と明かす。そのうえで、「西田昌司・参議院議員が提唱しているように、長期間にわたって便益を発生するインフラ整備を『財政均衡の外側で考える』というのは1つのアイデアだと思う」と付け加える。

 地元負担が問題になるのは、四国4県だけではない。岡山県の協力も必要になる。ただ、岡山県内で新幹線整備する際の地元負担は200〜300億円に上るといわれる。投資に見合うメリットがあるのかは不透明だ。岡山県は政令市を抱えるとはいえ、県人口190万人程度。財政に余裕があるわけではない。「四国のために支出する県費はない」と公言する県議会議員もいる厳しい状況がある。

衆議院議員 山本 有二 氏

 この点、千葉会長も「中長期的な観点に立てば、四国新幹線は岡山の発展にとって大きな効果をもたらすと考えている。さまざまな機会をとらえて、理解をいただくよう努力していきたい」と、トーンが下がり気味だ。

 自由民主党の四国新幹線プロジェクトチーム座長を務める山本有二衆議院議員は、岡山県の協力について、「県の経済界は賛成してくれているが、岡山県の合意を得るのは簡単ではない。『パンドラの箱』だ。佐賀県が地元負担を反対しているのを目の当たりにすると、なかなか開けられないところがある」という。

 期成会が考える四国新幹線の目的地は、あくまで新大阪駅。岡山駅は通過点に過ぎない。新幹線以前の問題として、四国新幹線が並行する在来線区間(岡山駅~茶屋町)が、建設費不足のため、単線のままという問題もある。「四国新幹線より、在来線の複線化が先決」という地元の声もある。現行のプランのままでは、岡山県の合意を得るのは難しいだろう。四国新幹線実現の最大の障害になる可能性もある。

四国新幹線イメージ図(四国新幹線整備促進期成会ホームページより)

(つづく)

【大石 恭正】

(前)
(後)

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