2024年04月20日( 土 )

ロックアイスの小久保製氷冷蔵~日田市で氷のまちづくり

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 「世界の氷 コクボのロックアイス」のキャッチフレーズで知られ、国内屈指の製氷業者である小久保製氷冷蔵(株)。九州地区におけるロックアイスの製造・販売を担当するグループ会社の(株)九州コクボは、大分県日田市を拠点に、製造に関わる原料・人材といった資源をほぼ地元で集約。日田市における「氷のまちづくり」で、氷を通じた地元密着の事業活動を推進している。

ロックアイスのパイオニア

 小久保製氷冷蔵(株)は1929年、軍需用途の石油プラント事業者として創業したのが始まり。戦後、千葉の氷問屋が氷を袋に入れて販売していたことを参考に、石油プラントの冷凍設備を生かした製氷事業に着手した。

 家庭の冷凍庫で水を凍らせると、含まれている空気や不純物によって、白く濁った氷となってしまう。同社では、空気や不純物を取り除く技術によって、透明かつ無味無臭な製氷「コクボのロックアイス」を開発。だが当時は、「氷は家庭でつくるもので、買うものではない」という意識が根強く、ロックアイスの販売に懐疑的な小売店舗が多かったという。しかし、大手コンビニエンスストアが同社のロックアイスを採用したことで、状況は一変。その後の販売が好調に推移したことで、同社は急成長を遂げた。今ではコンビニのほかに、スーパーやディスカウントストア、ドラッグストアでも販売されており、同社はロックアイスのパイオニアとして、現在も製氷業界を牽引している。

単なる氷に付加価値を

 小久保製氷冷蔵グループは近年、グループ企業の役員の若返りや、責任と権限の明確化を図る新体制となった。九州エリアを中心に製氷事業を展開する(株)九州コクボも、2019年6月に酒井東洋士氏(46)が代表取締役社長に就任。酒井社長は、「氷を買うことのさらなる理由付けとして、用途に合わせたさまざまな形状や数量の提供、季節感も出していくことを意識した販売展開を進めている。九州はディスカウントストアとドラッグストアが強い市場。ブランドより、低価格商品が求められがちだが、嗜好型の消費者も多く、そうした層にさらに品質をブラッシュアップした氷を提供していく」と話す。

 昨年は天候不順と消費増税などの影響もあった一方で、ラグビーのワールドカップ開催で主力商品のカップアイス需要が拡大した。こうしたスポーツ観戦での需要に加え、小中学生のマイボトルの浸透などから、幅広い世代で氷の利用が拡大しているという。なかでも九州コクボでは、スポーツ領域での利用拡大を図る取り組みに注力しているといい、飲用以外での用途も提案する。たとえば、スポーツ後のアイシング用途の普及に努めているといい、これまで福岡マラソンや佐賀マラソンなどのスポーツイベントに協賛。酒井社長は、「アスリートの使用数を増やすことが、浸透につながっている。医師やプロアスリートのアドバイスをいただき、氷を通じた疲労回復やパフォーマンス向上、爽快感などの効果について研究を進め、学術報告も視野に入れている」という。

「+Silica®(プラシリカ)」

 また、氷以外にも、2年前からは飲料水ビジネスにも着手。鹿児島県霧島市の日当山(ひなたやま)温泉郷の温泉水を使用した「+Silica®(プラシリカ)」を販売している。プラシリカには、希少ミネラルであるシリカ(微粒二酸化ケイ素)が多く含まれており、アンチエイジングや美容、健康、スポーツ飲料としての効果が期待できるという。「これまでの水ビジネス業界に風穴を開けるような商品を開発したかった」といい、これまでの同社の商品開発や販売ノウハウ、経験などを生かした自信の商品としてだけでなく、競争の激しい飲料水ビジネスへの参入は、業界で話題になっている。「一度使用すればリピートする商品。実店舗か通販か、どのような販売チャネルが効果的かは、まだ検証中」といい、今後は拡販するためのマーケティング戦略を推進していくという。

SDGsへの取り組み

 日田市に拠点を置いて23年になる九州コクボは、地元に根差した事業活動にも活発に取り組んできた。「SDGsとしての地方創生の推進を実現したい」(酒井社長)としており、社員や従業員のほとんどは日田出身の人材を採用。酒井社長自身も日田出身で、同社には「10代から50代まで幅広い有能な人材が集まっている」と話す。

 また、地域貢献活動の一環として植林などにも力を入れているほか、昨年の集中豪雨で被災した家屋の廃材や流木を地元企業に依頼して乾燥チップへと加工。発電事業者と提携し、この乾燥チップを用いた電力で製造のほとんどを賄っているという。さらに、日田の古い町並みの保全活動や古くから伝わる祭りなどのイベントにも積極的に協賛する傍ら、6月9日を「ロックアイスの日」として、自社でイベントも開催している。

 酒井社長は、「地元ですべて生産・供給することで、日田市を“ロックアイスの町”として浸透させることが夢。日田の魅力向上につながることで、九州コクボの存在価値も高まる」としている。

【小山 仁】


<COMPANY INFORMATION>
小久保製氷冷蔵グループ  (株)九州コクボ
代 表:酒井 東洋士
所在地:大分県日田市三ノ宮町2-1798
設 立:1996年8月
資本金:1,000万円
T E L:0973-27-7369
U R L:http://www.kokuboice.co.jp

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