2024年04月19日( 金 )

前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(10)

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 NetIB-Newsは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)をお送りする。今回は「ベトナム人留学生を取り巻く状況」について。


留学生への対応

 次に、留学生への対応を見てみます。
 ベトナム国内の留学斡旋機関は、2020年5月時点で約2100もあります。2年前は、約600でしたので、2年間で1500機関近く増加しました。教育訓練省および地方局の認可と監督を受けることとなっていますが、教育訓練省の体制不足のため、野放しに近い状況です。

 なお、技能実習生の「送出機関」は留学生斡旋機関を兼ねていることも多く、技能実習生としては訪日できない若者を語学留学生として、送り出しているケースも結構あると聞きます。

日本語テスト

ベトナム語を教える留学生

 17年初め、語学留学生の条件の1つが、N5相当の日本語能力を有していることが条件となっていますが、日本語を何も話せない、勉強したこともない若者が偽造書類を提出し、日本での資格審査をすり抜けて訪日しているとの情報提供が大使館にありました。

 右情報を受けて大使館では、同年3月、ビザ申請の機会に、語学留学生に対して日本語面接を開始しました。その結果、驚いたことに、20%近い人が日本語をほとんど理解できないにもかかわらず、N5の合格証書などの偽造書類を提出していました。
 2年目の18年は、偽造書類提出者は、約10%となりました。19年から、ペーパーテストに切り替えましたが、偽物書類提出者は5~6%でした。

代理申請停止処分

 17年3月から19年11月までの間、日本語N5に関連する偽造書類を提出してきたとくに悪質な89業者に対して、半年間の査証代理申請停止処分としました。ベトナム教育訓練省からの要請もあり、20年1月以降は、受付停止期間は1年となっています。

高校卒業証書の偽造

 また、語学留学の条件の1つは、高校卒業ですが、18年末、偽造卒業証書が売買されているとの報道がありました。調べると、「日本に行き、日本語学校に入学すれば、日本語も勉強できるし、20~30万円稼げるとの誤った情報をブローカーなどが流布している」。また、「日本の厳しい規律の下で、鍛えてもらえれば、出来の悪い子どもは立ち直れるかもしれない」。いろいろな期待を抱いて、親は偽造卒業証を購入しているとの話がありました。

 大使館は、19年3月、ビザ申請にあたり、教育訓練省が発給する「高校卒業証書認定書」の提出を義務化しました。4月に早速、認定書自体の偽造が発覚しましたが、すでに数十名が日本にむけて出発した後でした。
 この偽造認定書を提出してきた「留学斡旋機関」に対しては、無期限で代理申請を停止しています。

東京福祉大学-留学生所在不明問題

 19年6月、文部科学省が、東京福祉大学で約16百名の留学生が所在不明になっているとの調査結果を公表しました。同大学では16年から18年にかけて約1万2,000人の留学生を受け入れましたたが、内1,610名が所在不明、700名が退学、178名が除籍になっていました。

 同大学の留学生は、社会福祉学部などの正規課程の他、日本語などを学ぶ留学生別科、正規課程の準備段階の学部研究生などにわかれています。研究生のほとんどは日本語能力の低い学生や学費支払いが難しい学生が多かったということで、所在不明者の7割が研究生でした。

 本件を踏まえて、文部科学省は、留学生の在籍管理の厳格化を指導するとともに、私立大学経費補助金の減額・不交付措置も取ると公表しました。
 また、出入国管理庁は、在籍管理が適正にできていない大学などに対しては、当該大学留学生への在留資格を停止し、大学名を公表する旨発表しました。

初の留学生数減少

 19年末のベトナム人留学生数は、前年より約200名減少しました。10年の15倍増でしたが、この10数年で初めて減少となりました。

結核健康診断

 ベトナムでは、若者の結核罹患率が高いですが、語学留学生対しては、これまで健康診断(とくに結核)は、必要とされていませんでした。今年3月、7月からの義務化が公表されました。

(つづく)

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