2024年04月20日( 土 )

香港で国家安全法が施行に~中国全人代は通例のパブコメを実施せず異例のスピード可決

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 5月の中国全国人民代表大会(全人代)で突如として議題に上った香港の国家安全法が、6月30日の全人代常務委員会会議で可決され、同日午後11時(現地時間)から香港で施行された。香港では毎年、中国に返還された7月1日に大規模なデモが行われているが、それに対して警告を発するかのように同日前に駆け込みで成立・施行された。

 この国家安全法は、さまざまな点で異例ずくめであった。
 まず、全人代に上程されたにもかかわらず、その草案が一般に公開されないままであり、具体的な犯罪の構成要件や量刑などが明らかにされなかったため、憶測を呼ぶものであった。
 6月18~20日に全人代常務委員会会議が開催され、20日になって中国の官製メディア(新華社通信)を通して同法草案の説明が行われ、6章66条であることが伝わったが、依然として草案全文が公表されずにいた。

 全人代では、新法案の立法に際し、広く社会から意見を募るということで、パブリックコメントを募集する期間を最低30日間儲けるのが通例になっている(「立法法」第37条)。しかし、今回は草案全文が公開されておらず、従ってパブコメも行われなかった。立法法上は、「パブコメを実施しない」という決定を常務委員会が下すことが認められており、法律上問題はないが、異例である。

 また、通常、全人代常務委員会会議は2カ月ごとに開かれており、そこでの議論を経て、上記パブコメを実施し、その次の常務委員会で議論をし、問題がなければ可決といった具合に進められる。しかし、今回は6月18~20日に同会議が開催され、そのわずか1週間後の28日に再度、同会議が招集され、30日に可決となった。同会議の招集の権限は常務委員長(習近平の盟友・側近とされる栗戦書)に与えられており、こちらも法律上問題はないが、審議のスピードとしては異例の速さである。

 30日の可決後にようやく全文が公表された。以下の4つを犯罪行為の構成要件と定めている。

1.国家分裂
2.政府転覆
3.テロ活動
4.海外の勢力との結託

 量刑に関しては、上記4ついずれも、重大な行為に対しては、無期懲役あるいは10年以上の懲役に処すと定めている。

今後このようなデモは行えなくなるか

【茅野 雅弘】

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