2024年03月29日( 金 )

変貌しつつある大阪港~「阪神港」はどう生まれ変わるか?(3)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 近年、大阪港への注目が高まっている。そのきっかけは、大阪港に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」での大阪・関西万博開催、IR(統合型リゾート)誘致だ。大阪港は、古代から住吉津、難波津と呼ばれ、交易・交通の要衝として発展。江戸時代には「天下の台所」として、日本の物流、商業の中心地として栄えた。これを支えたのが、日本全国を網羅する水上交易ネットワークだった。大阪港が近代港湾として開港したのは1868年。以来、国際貿易港として、大阪市を中心とする近畿圏の経済活動、市民生活を支えてきた。現在も日本の“五大港”(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港)の1つに数えられる。大阪市は2019年、大阪港港湾計画を13年ぶりに改訂。物流、交流、環境、防災の4つを柱にしたみなとづくりを進めている。大阪港は今後、どのような変貌を遂げるのか。今回、物流、クルーズ、万博、IRの4テーマに絞り、それぞれの現状と課題などについて取材した。

手続きを効率化図り「CONPAS」検討も

 国際力強化のため、コンテナターミナルの整備も進んでいる。大阪港のメインコンテナターミナルである夢洲では、国土交通省の直轄事業として、主航路の浚渫、岸壁の延伸が行われている。主航路は、26年度までに水深−15mから−16m、幅は400mから560mに拡充される。岸壁(C12)は、17年に延長400mから650mに延伸。岸壁延長は1,350mで、ガントリークレーン9基が設置されており、引き続き、23年度までにC12延伸部の荷捌き地が整備される予定。

 国際競争力強化には、トラックによる効率的なコンテナ搬出・搬入ゲート手続きも不可欠だ。「CONPAS(Container Fast Pass)」という情報システムがある。関東地方整備局が開発したもので、PSカード(港の通行証)にドライバー情報、車両情報、貨物情報を事前登録することで、ゲート入場の事前予約のほか、ゲートでカードをかざすだけで、搬出・搬入手続きを完了できるシステムだ。現行の搬出・搬入手続きは、入場時にPSカードを係員に提示する必要があり、入場待ちなどのトラックがゲート前に滞留し、時間的なロスが発生していた。横浜港でのCONPASの試験運用の結果、入場時の所要時間を2割ほど短縮できたとされる。阪神港でも、このCONPASの導入を検討している。

 ただ、上海港や釜山港などでは、AIやロボットを活用した「スマート港湾」に向けた取り組みが加速している。搬出搬入の自動化はもちろん、構内作業がすでに無人化(自動化)されている港も少なくない。世界水準で見れば、港湾作業の自動化などはあって当然のシステムだが、日本は大きく出遅れているのが現状だ。

上がれてすらいない国際競争のステージ

 日本で港湾作業の自動化(無人化)が遅れた背景には、港湾労働者の反対が大きく影響している。港湾労働者とは、クレーンなどの機械を操作し、コンテナを積み下ろしたり、港内でコンテナを移動するオペレーターなども含まれる。

 港湾作業が自動化されれば、「自分たちの仕事が失われる」というのが彼らの主張だ。全国の港湾労働者組合が加盟する全国港湾労働組合連合会は19年、賃金改善を求め、ストライキに踏み切る構えを見せた。結果的にストは回避されたものの、港湾業界での労使の対立構造を浮き掘りにした事件だといえる。労使の足並みをそろえずして、国際競争力の強化はおぼつかない。

 その一方で、大阪港を含め、全国的に港湾作業員の人手不足が指摘されている。人手が足りないのであれば、自動化によりマンパワーを確保するのがセオリーだが、組合側はこれに反対している。組合側は「将来的には自動化は必要」というスタンスだが、10~20年後に自動化が実現したとしても、「時すでに遅し」なのは明白だ。「世界の他港と競う」という勇ましい港湾政策を掲げるのは良いが、日本の港湾は国際競争のステージに上がれてすらいないのが現状だ。

(つづく)

【大石 恭正】

(2)
(4)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事