2024年03月30日( 土 )

【コロナ禍】文化芸術こそ「社会と生存の必需品」~劇団わらび座・山川社長大いに吠える

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 新型コロナウイルスの感染がなかなか収束に向かわないなか、秋田県仙北市を拠点とする劇団で、オリジナルミュージカルの公演を行う「劇団わらび座」が依然として苦境に立たされている。代表取締役・山川龍巳氏からのメッセージを転載する。

 今年3月初旬、データ・マックスさまのデジタルでの「わらび座の危機緊急発信」が全国的支援の第1報でした。

 1月、中国武漢での新型コロナウイルスの小さなニュースのころは、対岸の火でしたが、あっという間に新型コロナウイルスの影響をわらび座はまともに受けはじめました。2、3月わらび劇場公演が中止に追い込まれ、卒業式や転勤などにともなう宴会、宿泊がキャンセルになり、それに続いて、わらび劇場公演はもちろんの事、北海道、岩手、宮城などからの4、5、6月の教育旅行がすべてキャンセルになり始めました。5月、6月での資金ショートが確実され、先人たちが、人生をかけて守り発展させてきた、このわらび座の70年の灯が消えるのかと震えました。開き直り、覚悟を決めての第1報がデータ・マックスさまのデジタル配信だったのです。

 開き直って呼びかけた3月半ばからの必死のお願いに、全国から延べ4,000名以上の方々から1億円強の支援金が集まったのには驚き、心底感動しました。

 わらび座の創設者、原太郎は「アクセサリーとしての文化芸術ではなく、生活必需品としての文化芸術の創造を目指す」と私たちに語り掛け、東京から9名のパフォーマーが民俗芸能の宝庫ともいえる秋田に定着したと語っておりました。

 ドイツでは、モニカ・グリュッタース文化大臣やメルケル首相が「ドイツ人にとって文化芸術は生命維持装置」と表現し、フリーランスの芸術家、文化産業従事者にも無制限に援助を行うと報道されていること、また平田オリザ氏が「フランスでは劇場は教会に準ずるもの」という位置づけるメッセージを発していることを知り、彼我の文化芸術に対する存在と認識の違いに驚きもしました。日本の場合、何人かのアーテイストの皆さんが、メッセージを出しては批判されており、「アーテイストというのは、好き勝手な連中が、好きなことをやっている」とでもいうようなイメージが定着しているようで、とんでもない違いに驚いてもいます。

 わらび座、創設者の原太郎がよく言っていた「生活必需品としての文化芸術の創造」という段階から、今や「社会と生存の必需品」としての文化芸術の創造ともいえる状況になっていると思えます。人間は、良い意味での宗教と文化芸術によってしか、救えないのかもしれないとさえ思えます。未熟なりといえども我々現役がその魂を引き継いでいると自覚もしているのですが、今回のご支援はそれへの共感と賛同だったのではないかと思えてなりません。

 困ったことに、コロナウイルスの2波3波が避けられそうもなく、学校公演を含む全国公演がキャンセル続出で、次の段階の危機に遭遇し始めていることです。

 6月初旬に全社集会をもち、全国公演が中止になり仕事がなくなった、役者やスタッフたちに、2週間でも1カ月でもほかの会社で働かせてもらう動きも実現したいと呼びかけました。強いミッションの下にわらび座のメンバーは集まっており、みんなやる気に溢れ気勢が上がったことには励まされました。しかし長期化するなかで体力勝負に持ち込まれており、予断を許さない事態に陥っていると気が気ではありません。世界中が苦しんでいるこの事態を何とか突破しなければと思っています。さらなる支援をお願いする次第です。

 「黄に紅に花は咲かねど わらびは根っ子を誇るもの 山は焼けてもわらびは死なず」これがわらび座の名前の由来です。頑張ります。

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