2024年03月29日( 金 )

あと2時間豪雨が続いていたら・・・7月8日の大牟田市内の状況

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九州全体に豪雨

 7月4~7日、九州の南部から北部におよぶ記録的大雨で各地に大きな傷痕を残した九州豪雨。豪雨により、各地の一級河川が氾濫し、街中が浸水に襲われた。豪雨は、絶命する人々、流される自動車、家屋建物の床上浸水、農地の汚損など、多くの犠牲者を生み、多大な被害をもたらした。
 福岡県内においても、筑後川および支流河川が氾濫するなどして、大牟田市・久留米市など福岡南部エリアにおいて甚大な被害が発生した。豪雨はその後も勢いを止めず、本州に移動して同様に被害をもたらしている。

線状降雨帯による豪雨

 九州南部豪雨の原因について、福岡管区気象台は「7月3日に東シナ海の梅雨前線上に低気圧が発生し4日未明には九州北部地方に進んだ。低気圧の東進にともなって3日夜には梅雨前線が九州北部地方まで北上、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、九州では大気の状態が非常に不安定となった。4日未明から朝にかけ、熊本県と鹿児島県では記録的な大雨となった」と分析している。端的に、「雨雲が次々と発生し、風の流れで帯状に連なる線状降水帯が要因となった。近年線状降水帯による豪雨は、相ついでおり、全国各地で警戒が必要である」と分析する気象専門家もいる。

生命の危険と背中合わせ

なお浸水したままの地域も(8日時点)

 大きな被害を受けた地域の1つ、大牟田市の8日の様子を伝える。6日から大雨に見舞われ、大雨特別警報が発令されたなか、2名の犠牲者が出た。ほかにも、家屋建物浸水、道路浸水・冠水、土砂崩れなど甚大な被害が発生している。

 市内の道路は水浸しであったが、8日には約90%の道路が通常に戻り、車輌の往来などの交通状況も平常どおりに戻っていた。他方、浸水・冠水によって、道路上に浸った水が引いていないエリアも残されており、三川町・上屋敷町・三里町などにおける一部道路が、通行止めとなっていた。水が引いた後の道路・歩道上には、浸水・冠水によって流された住民の所有物やゴミが散乱するという異様な光景がうかがえた。

浸水し救援を待つ自動車

 被害状況は予想していた以上であった。複数の地域住民が「あと2時間程度豪雨が続いていたら、さらに厳しい状況に陥っていたのではないか」と話していたが、これ以上の被害は想像しにくいほどであった。

 三川町・上諏訪町において、いまなお道路が水浸しとなったままのエリアがある。自動車が浸水のため駆動しなくなり、レッカー車を待つ住民が続出した。(一社)日本自動車連盟(JAF)など車輌修理会社のレッカー車が、次々と救援に駆け付ける光景が印象的であった。
 また、あるコンビニエンスストアのオーナーは、「1週間程度で再開したいですね…ただメドは立っていないです。ほかの商店や企業の皆さんも同様かと…」と嘆く。

 南船津町にある(福)しらぬい福祉会不知火保育園は、園舎が床上浸水に見舞われ、一時閉園を余儀なくされている。同園園長は、「ピークであった7日は、腰上あたりまで水に浸かりました。男性がやっと自力で歩けるくらいで、女性には歩くのも厳しい状況でした。園内のなかはご覧の通りです…いつ再び開園できるかは、わからないですね。本日、園のスタッフ全員で、早朝から荷物とゴミ残骸の整理や、泥などを洗い流すことから仕事を始めています。地域の方々や宅峰中学校の生徒さんが手伝いにきていただいて感謝しております。近隣住民の方々も、今後が大変です…」

不知火保育園
みなと小学校

 一時孤立状態となり、一時ライフラインが寸断された上屋敷町のみなと小学校。取材のため同校に向かったものの、許可を受けた者以外の立ち入りが制限されており、メディア各社のスタッフが正門前で待機していた。周辺住民によると、「水位は腰上までありました。当然身の危険を感じ、避難しました。今まで経験したことのない雨でした…」と豪雨について切実に語った。

 宮原町の三池炭鉱宮原坑専用鉄道敷跡内に、発生した土砂崩れ。樹木が倒れ斜面も崩れ落ちている。同市職員によると、「見学を再開できる時期は未定で、慎重に検討中です。お越しになる方々の安全が、最優先です。9日もしくは10日に、再び大雨となる予報がでております。まだまだ危険な状況が続きますので、大雨への備えを徹底していきます」と今後について語った。

引き続き警戒が必要

 大牟田市内のほとんどのエリアにおける公共インフラ・ライフラインは、平常通りとなっている。一方で前述したように一部エリアは現在も混乱している状態だ。被災したエリアの復旧には相応の時間を要することが予想される。
 週末にかけて、九州地方および本州が再び豪雨に襲われるという予報が出ている。予報がはずれることを願いながらも、避難場所の確認など命を守るための備えをすることが、求められる。「自分は大丈夫」などという無関心が、もっとも危険であることを、自戒を込めて記したい。

 

【河原 清明】

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