2024年04月20日( 土 )

IT化の波、技術革新が企業に迫る変化~コロナ後の変化に対応していくには(後)

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オンライン化を進め、企業のプロセスイノベーションを

 聞き取り調査においても、オンライン化への対応は大きくわかれている。リモートワークがうまくできなかった企業の回答で多かったのは、第一に「自社はリモートワークを行う体制ができていない」というものである。現場作業、店舗販売は別として、それらの企業は日頃からIT化が遅れ、オンラインでの情報共有・連絡体制を構築できなかったようだ。第二に、業務に必要な顧客情報などが社外持ち出し禁止となっており、業務に支障を来たしたというものだ。

 オンライン化は技術的な対応にとどまるものではなく、情勢の変化に応じて業務の工程を見直し、改めるというプロセスイノベーションでもある。今回、企業のなかには勤務体系、評価制度、管理、営業の手法などの刷新を進めているところもある。従来、リモートワークは社内の一部で取り入れられていたにすぎないことが多く、社員の大半がリモートワークをするという状況は未経験であり、それを管理する取り組みがすぐにうまくいくとは限らないが、生産性の向上に成功する企業が出てこよう。それは、さらに新たな技術を取り入れ、事業のブレイクスルーを達成する手助けとなる。

 リモートワーク体制の構築にあたり、まず、オンラインで何が可能かについて知見を深めておくとよい。社内での日常的な情報共有にはMicrosoft Teams、Slack、Chatworkなどのコラボレーションツールが向いている。グループ分けができ、チャット、通話、オンライン会議、ファイル共有ができ、社外との連絡も可能だ。

 ビジネス支援のITソフトは業務の効率化、標準化、可視化などに役立つ。クラウド型ソフトであれば、分散した拠点でリアルタイムに情報共有を行うことができ、リモートワークも行いやすい。営業・マーケティング関連では、SFA(営業支援)、CRM(顧客管理)などのソフトがある。メールとチャットだけでも営業社員が出先から部門内での情報共有、報告を行うことは可能であるが、SFAなどを利用することにより、本人も案件管理、報告が容易になり、上司などからみれば予実管理、顧客情報の共有などがしやすくなる。

 セキュリティ対策に関して、不正アクセス防止については、一般的なセキュリティソフトのほか、VPN(仮想専用線を設け、通信経路の安全を図る技術)接続の導入、セキュリティ措置を講じたモバイルWi-Fiの社員への支給などがある。情報漏洩防止については、文書管理ソフトによる持ち出し申請・承認システムの構築、USB内の重要データへのコピー制御処置などがある。

 ただ、中小企業でオンライン化を進めようにも、社内にIT人材がいないということもある。IT導入支援のコンサルティング会社のほか、中小企業庁、各地の商工会議所も関連のセミナーを開催し、サービスおよび事例の紹介や体験ワークショップなどを行っている。補助金を得られるものもあるので、調べて活用していただければと思う。

(了)

【茅野 雅弘】

(前)

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