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2020年07月30日 07:00

【株主総会血風録3】駅探~筆頭株主が全役員をクビ!経営陣が戦わずして白旗を掲げたワケは?(後)

 東証マザーズ上場で、乗り換え案内のサービスを手がける(株)駅探は、筆頭株主である(株)CEホールデイングス(HD)(病院向け電子カルテ大手、東証一部上場)から全取締役を解任し、新役員を求める株主提案を突き付けられた。プロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展かと思われたが、6月29日の定時株主総会を前に、会社側は取締役選任議案を取り下げた。会社側は白旗を掲げ、城を明け渡したのである。なぜか!?

CEHDは北海道発祥の病院向け電子カルテのベンチャー

 駅探は11年3月3日、東証マザーズに上場した。初値は公開価格比約2倍の5,530円。しかし、1週間後の3月11日、東日本大震災によって株価は大暴落。間一髪で、ポラリスは一部を放出し投資額を回収した。エグジット(売却益を得る)先としてCEHD(当時の社名は(株)シーエスアイ)に声をかけ、12年5月に譲渡が実現した。

 だが、駅探とCEHDの提携には最初から無理があった。駅探は乗り換え案内、CEHDは病院向け電子カルテの開発。両社の事業に関係性はまったくない。

 CEHDは、杉本恵昭社長(69)がコンピューター会社からスピンアウトして1996年に札幌市で立ち上げた電子カルテシステム開発のベンチャー企業。札幌商工会議所により「北の起業家表彰」優秀賞、北海道経済部より北海道「元気の素」発信企業に選ばれるなど、北海道の期待の星だ。

 東証マザーズ(その後、東証一部に上場)と札幌証券取引所に重複上場。電子カルテのシェアで富士通(31%)につぐ国内2位(17%)。主力とする中小病院からの受注が伸び悩んだため、電子カルテ一本足打法から脱却するために、M&A(合併・買収)に乗り出した。その1社が駅探である。

東芝出身の個人株主は、東芝出身者が役員の大半を占める株主提案を支持

 乗り換え案内サービスは駅探のほか、ジョルダン、ヴァル研究所、ナビタイムジャパンの4社が競合している。MaaSには鉄道やバスなど複数の交通機関を組み合わせて適切なルートを割り出す機能は不可欠だ。MaaSはICT(情報通信技術)を活用し、1つのアプリで電車・バス・タクシーなどの交通サービスの道路検索や支払いを一括して提供することを目指しているサービスである。事業の前途は明るい。

 駅探の事業収入は、スマホ経由の個人課金、交通事業者や携帯キャリアなど法人向けライセンス販売、ネット広告の三本柱だ。

 20年3月期の連結決算は、コロナの影響を受け、売上高は前期比5.6%減の28.6億円、営業利益は29.4%減の3.3億円、純利益は92.0%の2,300万円と大きく落ち込んだ。それでも売上高営業利益率は11.8%、自己資本比率は84.0%。隠れた優良企業だ。

 CEHDが将来性のある駅探を子会社にしたいのはわかる。しかし、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は「CEHDが支配権を握りたいなら、適切なプレミアムを付けたTOB(株式公開買い付け)を行うべきだ」として会社側を支持した。

 ところが、駅探は6月24日、29日に開く定時株主総会に諮る予定だった取締役と補欠監査役の選任議案(会社提案)を取り下げると発表した。他の株主から十分な賛同を得られなかったという。

 なぜ、あっさりと手を挙げたのか。個人株主は、東芝から独立して駅探を立ち上げた同志たちだ。彼らにとって、駅探は「おらが会社」なのだ。

 CEHDの株主提案で社長になるのは東芝出身の金田直之氏。脇を固める取締役は、技術部門の長老の奥津浩一氏など東芝OBたちだ。

 東芝OBの株主たちは「元東芝のキーマンたちがいなかったら、政府関連の大きな案件は扱えないのに、常務のパワハラで退職してしまった。元東芝のキーマンの大量退職が低迷の原因とみている」(証券アナリスト)。

 新体制は金田社長はじめ、東芝出身者たちだ。東芝OBの株主たちは、東芝の復活と受け取り、中村太郎社長に三下り半を突き付けた。これが、中村社長が戦わずして城を明け渡した理由だろう。

(了)

【森村 和男】

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