2024年03月30日( 土 )

「ウォーカブル」なまちづくりで神戸市は復活できるか?(1)

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 神戸市の中心、三宮駅周辺が変わりつつある。神戸市は震災から20年が経過した2015年、歩行者優先のまちづくり(ウォーカブル)を志向した三宮駅周辺地区の「再整備基本構想」を策定。18年には、構想に基づく『神戸三宮「えき≈まち空間」基本計画』をとりまとめた。また、20年7月から「タワーマンション規制(容積率規制)」がスタート。居住機能を抑制する一方、オフィスや商業施設の優遇に踏み切った。阪神淡路大震災から20年間、“攻め”のまちづくりができなかった神戸・三宮だが、総事業費7,440億円(官民合計)を投じるプロジェクトによって、かつての存在感を取り戻すことができるのか――。

できなかった再開発

 三宮エリアは、神戸市のビジネス、ショッピング、観光、行政などの中心地として、鉄道や道路などのインフラなどが集積する一方、南北に山と海が近く、景観豊かなエリアだ。鉄道駅としては、JR西日本(三ノ宮駅)、阪急電鉄(神戸三宮駅)、阪神電鉄(神戸三宮駅)、神戸新交通(三宮駅)、神戸市営地下鉄(三宮駅、三宮・花時計前駅)の6駅が乗り入れ、山陽新幹線新神戸駅、神戸空港へのアクセスもある。

 三宮駅は、ドカンと大きな駅ビルがそびえ立っているわけではなく、広大な駅構内に何本もホームが並んでいるわけでもない。地上に駅ビルが立地するのはJRと阪急、新交通だけで、他の3線は地下になる。それらの路線は、JRや阪急と地下街や地下通路などで何となくつながってはいるが、乗り換えには距離があり、周辺に分散しているイメージだ。駅のインパクトという意味では、大阪駅はもちろん、京都駅と比べても、正直見劣りする。

 「6駅が乗り入れる」――というと一見便利そうだが、乗り換え動線がわかりにくいなど、各駅の接続はイマイチだ。JR三ノ宮駅、阪急神戸三宮駅前には、三宮交差点を軸に東西南北に幹線道路(中央幹線・税関線)が走っているのも問題だ。車線、交通量が多く、駅とまちの分断感が生じている。駅前にこれといった広場がないことも、駅の狭隘さを際立たせる。2013年に阪神三宮駅の改修工事が行われるなど、散発的な駅周辺の環境改良は実施されてきたが、駅周辺の基本的な骨格はここ30年以上ほぼ変わっていない。

 なぜ、30年以上もの間、再開発が行われなかったのか――。この点、神戸市職員は「したくても、なかなかできなかったというのが正直なところ」と明かす。「1995年の阪神淡路大震災が起きて、その後10年間は震災からの復興で手いっぱい。次の10年間は市の借金を返済するのに手いっぱいだった」と振り返る。

現在の三宮交差点

(つづく)

【大石 恭正】

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