2024年04月24日( 水 )

韓国、集団感染の発生でコロナ再拡大の恐れ(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国では、新型コロナウイルス感染者の早期発見と隔離の徹底により収束に向かっていたが、首都圏を中心にここ数日間、感染が急速に再拡大しており、早くも新型コロナウイルスの第2波が懸念されている。

 8月に入り、新型コロナウイルス新規感染者数は1日当たり20~40人で推移してきたが、8月23日には397人の感染が新たに確認され、新規感染者が再び急増している。

 2月中旬には、宗教団体の集団感染をきっかけにして感染者数が急増したものの、後に減少して最近では数十人にとどまっていた。ところが、新規患者数は8月13日に103人、同14日に166人と急増した。韓国では、2日連続して100人を超えたのは、3月以来のことである。

 長期にわたる新型コロナウイルス流行で国民の警戒心が低下したことは事実だが、今回の再拡大の背景には、前回のように宗教団体が絡んでいる。韓国政府は、宗教団体を「震源地」にした2次感染が各地で報告されているため、1週間以内に感染拡大を抑え込まなければ大流行につながるのではないかと緊張を募らせている。

 韓国では以前にも、大邱市の「新世界イエス教会」で5,214名の集団感染者が発生したため、韓国政府は全力を上げて対応し、封じ込めに成功した。その後、ソウル梨泰院ナイトクラブで発生した277名の集団感染もうまく乗り切った。

 今回の「震源地」は、ソウル市にある「サラン第一教会」という宗教団体である。サラン第一教会では8月22日現在、796名の患者が発生し、うち747人の首都圏の人であった。同教会の信者数は約4,000人で、そのうちおよそ半数が検査を受けたところ、陽性率は16.1%という結果となった。新型コロナウイルス検査が普及すればするほど、患者数は増え続けている。

 サラン第一教会の牧師は、政治活動に関心の高い人物で、政治集会をこれまで2,300回も開催している。8月15日には文在寅政権を批判する5万人規模の反政府集会を開催し、多数の信者が参加したが、検査の結果、牧師、牧師夫人、秘書ともに新型コロナウイルスの陽性と判定された。

 同教会は韓国政府の政策に批判的で、積極的に反政府集会を開いているが、時期が時期だけに信者が集会に参加したり、食事をともにしたりすると、感染拡大に拍車をかける原因になる。登録されている信者数よりも同教会を訪問する人数が多いという珍しい教会で、サラン第一教会発の新型コロナウイルスの大流行が起こるのではないかと韓国当局は懸念している。

 韓国では、新規患者数は1日当たりの最高記録である909人にはまだ到達していないものの、ここ数日間は数百人規模で新型コロナウイルス患者数が増加し続けており、再拡大が懸念されている。韓国政府は19日、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、首都圏の防疫レベルを3段階中の2番目に引き上げ、50人以上の室内集会を禁止するなどの対策を発表した。しかし、規制を強化すると、経済活動への影響も大きくなり、経済危機への対応が難しくなることも事実である。経済を優先して規制を緩和すると、感染が広がるため、各国政府はワクチンが開発されるまで、難しい判断を迫られている。

(つづく)

(後)

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