2024年04月24日( 水 )

緑を核にした居心地の良いまちづくり「コミュニティ・デベロップメント」とは(前)

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東邦レオ(株) 代表取締役社長 吉川 稔 氏

「つくる」から「使う」そして「企画する、考える」へ

 ――まず、御社の事業領域についてお聞かせください。

東邦レオ(株) 代表取締役社長 吉川 稔 氏

 吉川 当社は今年で創業から55年を迎えた会社ですが、当初の25年間くらいは黒曜石パーライトという断熱建材の製造・販売・施工を手がけていました。その後、それまでに培ってきた技術を応用して緑化関連事業部を発足させ、屋上緑化や壁面緑化などの都市緑化に取り組んできました。これらの「グリーンインフラ」事業が、今でも当社の根幹にあります。

 そして10年くらい前からは社会環境のニーズも変化し、それまでの「より多く緑をつくる」「より多く建物をつくる」というようなところから、つくった後に、どうすれば「人が豊かに使えるか」「過ごせるか」という方向へとユーザー側の意識の基軸が変わってきました。

 当社でもその頃から、それまでのいわゆる「つくる」から植栽管理などのメンテナンスの分野へ、さらに植栽だけでなく、そこにいる人々、関わる人々などのコミュニティづくりの方向に、事業をシフトさせてきました。どちらかというと“人”に関わる部分へと比重を移してきたのが、ここ10年の当社の事業で、そのなかで屋上をどう活用していくかというソフト開発を行ったり、大きな商業施設の屋上を植栽で菜園にしたり、さらにはつくるだけでなく、商業施設の屋上でオープンカフェ風のグランピングテラスを運営したり、というようなことをやっています。

 現在は「グリーンインフラ」を始め、人の暮らしを支え豊かにする「グリーンライフスケープ」、人の暮らしにつながりを咲かせる「グリーンカルチュラルエンジニアリング」、公共空間や不動産のブランディングを行う「グリーンディベロップメント」の4つのカテゴリーに事業領域を分けて、ハードとソフトの両面で緑を通じた居心地の良いまちづくりを進めています。

 ――もともとのグリーンインフラ事業は継続して手がける一方で、新たにコミュニティづくりの方向に事業領域を広げてこられたわけですね。

 吉川 当初の「つくる」から「使う」へ、そして「使う」から今度は「企画する」「考える」というところに領域がシフトしてきている感じですね。当社の言葉で「コミュニティ・デベロップメント」といっているのですが、地域住民の方であるとか、そこに関わる方々、あるいはそこに新しく出店を考えている方や、そこで働こうと思っている方などを、ある意味巻き込んだかたちでコミュニティをどう開発していくか――。そうしたプランニングのところに関わるようになったのが、この3年前くらいからですね。

エントランスからランドスケープまで、コミュニティをデザインするリノベーションを行った
「青山ビルヂング」

団地の新たな可能性~宗像・日の里がモデルケースに

 ――宗像市の「日の里団地」でのコミュニティの再生なども手がけられていますが、これがまさに「コミュニティ・デベロップメント」ですね。

 吉川 日の里団地のような団地の再生というか、ある意味で団地の新たな可能性を見出していくという事業は、私どもとしても初めてのことです。通常であれば、設計・企画を行う会社がいて、開発当事者、ゼネコンさんのような施工会社、そして最終的に運営・管理を行う会社と、4つに分業されていると思うのですが、日の里では一貫して4つともすべて自分たちでやろうと考えています。

 もちろん当社単体では難しいので、当社を含めた10社で「日の里JV」を組んで、宗像市やURとも連携しながら持続可能なまちづくりを推進していくのですが、やはりすべての立場で関わり、そして理解することで、こうした団地の新たな可能性を見出したコミュニティづくりの、1つのモデルケースができるのではないかと考えています。

 ――改めて団地を考えると、意外に立地が良いなどの高いポテンシャルを秘めているケースが多々あります。そうした団地の可能性に着目し、新たな魅力を引き出す事業はとても面白いと感じます。

 吉川 とはいえ、何をどうすればいいかの答えがあって取り組んでいるわけではなく、取り組んでいくなかで試行錯誤しながら、研究開発を行っているような状況です。取り組むなかでニーズが出てきたものについては、どんどん事業を立ち上げていくような。こうした事業モデルの研究開発に、今は好んでリソースを割いているという感じですね。

(つづく)

【坂田 憲治】


<PROFILE>
吉川  稔
(よしかわ・みのる)
1965年、大阪府出身。89年に神戸大学農学部卒業後、住友信託銀行での勤務を経て、投資会社をベンチャーとして起業するほか、セレクトショップ運営の(株)リステアホールディングスの取締役副社長やカフェ経営のカフェ・カンパニー(株)取締役副社長などを歴任。2016年11月に東邦レオ(株)の代表取締役社長に就任した。関連会社の(株)NI-WAの代表も務めており、緑を核としたまちづくり・暮らし・働く・住まいをトータルプロデュースする「ライフスタイル提案」に取り組んでいる。


<COMPANY INFORMATION>
東邦レオ(株)

代 表:吉川 稔
所在地:大阪市中央区上町1-1-28
設 立:1965年1月
資本金:9,600万円
URL:https://www.toho-leo.co.jp

<COMPANY INFORMATION>
(株)NI-WA

代 表:吉川 稔
所在地:東京都千代田区九段北1-15-9
設 立:2016年7月
資本金:2,000万円
URL:https://ni-wa.co.jp

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