2024年04月19日( 金 )

別府市のマンション設計偽装~住人の安全を一顧だにしない大分県の対応(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 構造設計一級建築士の仲盛昭二氏(一級建築士)が所有する大分県別府市の分譲マンション「ラ・ポート別府」に構造設計の偽装があったとして、仲盛氏が建築確認の管轄である大分県の広瀬知事および別府市の長野市長あてに質問書を送付したことは、Net I・B Newsの6月18日付の記事で報じた。

ラ・ポート別府
所在地:大分県別府市若草町4番3号
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)11階建て、総戸数42戸+2店舗
平成3年(1991年)7月築(築後28年11ヶ月)
建築主:太平産業(株)
設 計:松井建築事務所  
施 工:(株)さとうベネック

 このマンションは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)であり、以下3点を考慮した構造計算が行われておらず、耐震強度が不足した状態となっており、解体・建て替えを要する違法建築であることが判明している。

 (1)1階鉄骨柱脚が非埋め込み形柱脚である
 (2)柱脚の鉄量が規定量(柱頭の鉄量と同等以上)より60%も不足
 (3)耐力壁を有する架構において、耐震壁方向に有効な鉄骨が配置されていない

 仲盛氏が指摘しているように、このマンションの耐震強度は、建築基準法に定められた最低のレベルを下回っている。1階柱脚(柱の根元)の鉄量は、規定量よりも60%も不足している。

 11階建てマンションを支える肝心の足元となる1階柱脚が60%もの強度不足であれば、大地震が発生した場合、マンションが倒壊する可能性が高いということは容易に想定できる。別府は、日本列島を東西に貫く断層「中央構造線」に近い位置にあり、大地震が発生した場合には大きな被害が予想されている。

最も弱い1階が崩壊したと想定したCG

耐震偽装マンションの税金は額面通りが妥当?

 仲盛氏は、このマンションの設計偽装・耐震強度不足の実態について大分県知事や別府市長に質問を行なったが、知事・市長から論点をずらした不誠実な回答しか得られず、このマンションの区分所有者や近隣の住人が危険に直面しているなか、仲盛氏宛てに大分県別府県税事務所から今月、不動産関連の税金の納付書が届いた。

 設計が偽装され、耐震強度が不足したマンションに対して、評価額を基にした税金を課税することは適切なのだろうか。耐震偽装マンションの売却は不可能であるため、売却価格の相場すら成立していない。

 総務省は姉歯事件の際、「耐震強度偽装により使用禁止や退去勧告などが出されたマンションの所有者が支払う固定資産税と都市計画税の減免」を自治体に通知した。また、国税庁は「耐震強度偽装により倒壊の恐れがあるマンションの住民に対して、天災の被害者と同様に所得税の軽減措置」を適用している。

(asahi.comから引用)
(asahi.comから引用)

 上記の「耐震偽装マンションの不動産関連の税金の軽減措置」の事例からもわかるように、別府の耐震強度不足マンションの「ラ・ポート別府」の不動産関連の税金についても同様に考えるべきではないのだろうか。県税事務所は、「ラ・ポート別府」のすべての区分所有者に対して、固定資産税などの減免の実施を検討すべきではないのだろうか。 

(つづく)

【桑野 健介】

(2)

関連記事