2024年04月20日( 土 )

別府市のマンション設計偽装~住人の安全を一顧だにしない大分県の対応(3)

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 大分県別府県税事務所から先日、不動産関係の税金の納付書が届きました。設計が偽装され、本来の耐震強度も資産価値も有していないマンションに対して、当然のように課税することに疑問を抱いた私は、別府県税事務所長あてに以下の文書を送付し、税金の支払いを留保することにしました。

(大分県別府県税事務所長に送付した文書)

大分県別府県税事務所長 様
 ラ・ポート別府(以下「本マンション」)1001号室の不動産取得税納付書(宛名番号4206682-枝番001・002)をいただきました。本マンションについては、設計における偽装が明らかになっており、本来の価値を有していません。

 設計の偽装を見逃し建築確認済証を交付した大分県知事と別府市長宛に質問書を送付し、回答をいただきましたが、甚だ不誠実な回答であり、耐震偽装という違法行為を重大事と考えているとは思えません(大分県・別府市への質問書と回答を同封しますので ご参照ください)。

 私は、自身の資産である本マンション1001号室の対外的な価値が下がることを覚悟の上で設計偽装の事実を公表しました。偽装の事実を知っていながら、これを隠蔽することは、偽装を行った者と同等になってしまうからです。

 例えば、航路の水面下に岩が隠れていると知った場合、知らせることは当然のことだと思います。同じように、本マンションの設計偽装の事実を知った私には、偽装の事実をマンション住人及び近隣住人に知らせる義務があります。仮に、耐震強度が不足している本マンションが地震により倒壊し近隣の建物に被害を与えた場合、私たち本マンション区分所有者は加害者の立場となってしまいます(別紙CG参照)。

 私の質問書に対する大分県と別府市の回答は不誠実で 県民の安全を考えた回答となっていないので、大分県及び別府市から合理的で納得できる回答をいただけるまで、取得税の納付を留保いたします。

2020年8月21日
仲盛 昭二

 私が自分のマンションの価値が下がることを覚悟の上で、設計の偽装を指摘している理由は、「区分所有者のためにも、知り得た事実は伝えるべき」という信念があるからです。

 たとえば、船の航路の水面下に岩が隠れていて、船が座礁する危険性があれば、当然のこととして船長に知らせるはずです。危険を回避しなければ乗船している自分自身にも命の危険がおよぶからです。同じように、私は自分が所有するマンションが倒壊し、近隣の住民に対して加害者となることは避けたいと考えています。そのため、自分のマンションの資産価値が下落することを覚悟の上で指摘しているのです。

 先日、同じマンションの区分所有者の方から「このマンションの設計偽装のことを仲盛さんが公表したので資産価値が下がり、売却予定だった自分の部屋が売れなくなった。あなたを訴える!」と非難されました。

 この方の気持ちは理解できないこともありませんが、設計偽装の事実を隠したまま マンションを売却することは不法行為にあたるのではないしょうか。私が「ラ・ポート別府」の設計偽装を明らかにしていなければ、耐震強度が不足したことを知らないまま住人は居住し続けていたのです。

 大地震が発生すれば、マンションに大きな被害が出るばかりでなく、近隣の建物や住人にも被害を与える加害者となります。もちろん、耐震強度が不足したマンションの資産価値はゼロに等しいことはいうまでもありません。

 設計が偽装され耐震強度が不足しているという事実を知らずにマンションを購入した買主が、設計偽装の事実を知れば、売主を訴えることは間違いありません。私に「資産価値が下がった」と非難をした方は、マンションを売った相手から訴えられても「私は偽装を知らなかったから売買は適切だった」と主張できるでしょうか。裁判所が認めることはないと考えられるため、売主は買主に対して、契約解除や損害賠償を負うことになります。


(つづく)

【桑野 健介】

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