2024年04月25日( 木 )

球磨川の堤防決壊は逆流入が原因か~九地整が第2回調査委員会(後)

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(2)筑後川

水位上昇にともない自噴・噴砂が発生

 久留米市内を流れる筑後川で発生したのは、堤防の決壊や損壊とはまた違ったかたちの“自噴”と呼ばれる現象だ。自噴とは、地下水などが自然に地下から地表へと湧出する現象のことで、扇状地の末端や地質学的に帯水層が盆地状の構造となっている地域などで見られることが多い。その代表的なものが、井戸や温泉などだ。

2020年8月7日開催 第2回調査委員会の様子

 今回の豪雨時の筑後川では、右岸39k600付近において、堤内地側で自噴が確認された。ちょうど筑後川上流域においては時間雨量20~30mmの強い雨が長時間にわたって降り続き、すぐ近くの片ノ瀬水位観測所では自噴発生と同時期に過去最高水位(10.52m)を記録。筑後川の水位がピークに達した際に自噴が発生したかたちだ。付近では、近隣の3カ所で少量の噴砂が確認されたほか、2カ所でわずかな湧水も確認された。現地調査の結果によると、今回の自噴発生箇所は、旧堤防と現堤防に囲まれた場所に位置しており、周辺と比較しても地盤高が最も低い場所だった。

 筑後川における自噴については、7月13日の第1回調査委員会の開催以降にも引き続き調査を実施。自噴箇所を含む5カ所で簡易サンプリングおよび地下水測定を行ったところ、次のような状況であったことが推察されている。まず、現地の地下水は難透水層であるAc層(沖積粘性土)を境界として、上位および下位の2層が存在すると仮定。また、「河川水位」と「地下水位」の動きが連動していることから、河床にはAc層およびAgs層(沖積礫混じり砂層)が連続して分布している可能性が高く、下位地下水は河川水と連動している可能性があるとされている。

 こうした調査結果により、自噴発生のメカニズムについては、河川および堤内地側から供給された下位地下水が、透水層であるAc層およびAgs層のなかを急上昇。これにより同層の空気を押し上げ、上載荷重が小さい川裏法尻位置で自噴が発生したと推察される。

 今後については、安全性確認のための短期的調査(約1カ月を想定)と、メカニズム検証のための中期的調査(2~3年を想定)の2種類の調査実施を予定している。ボーリングによる地質調査や地下水調査に加えて、河川水位と堤内水位の関連性確認のための水位観測なども行い、今回の自噴発生のメカニズムの解明と、今後の対策などにつなげていきたい考えだ。

  

 第2回委員会では、主に現地調査などを踏まえたうえでの、堤防決壊および自噴の原因究明に絞った議論となった。今回の2河川での堤防被災は、これまでの築堤主体の河川整備の、いわば裏をかくようなかたちで発生したものだ。近年の豪雨の激甚化にともない、今後もイレギュラーな災害の発生は増えてくると考えられ、河川整備もそれに対応した在り方を求められるだろう。

 九地整では引き続き調査を実施してデータによる裏付けを行うだけでなく、ほかの要因での可能性も検討しながら、原因特定と全体像把握に注力するという。次回会議では、今後の復旧工法などについての議論を進めていきたい考えだ。

(了)

【内山 義之】

(前)

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