2024年03月29日( 金 )

【川辺川ダムを追う】川辺川ダム建設予定地~現地レポート(前)

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 建設中止に追い込まれてから12年。川辺川ダム建設予定地は、今どうなっているのか――。熊本県五木村、相良村などのダムゆかりの場所を回り、現地で感じたことなどをレポートする。

現在の川辺川ダム本体建設予定地周辺。管理用道路や柵、コンクリート構造物などが見える
(国道445号から下流を望む)

人吉市から五木村へ向かう

 取材当日は、宮崎方面から熊本県入り。なにはともあれ、川辺川ダム水没予定地の熊本県五木村に向かうことにした。五木村は、人吉市から国道445号を北に約30km進んだ場所にある。国道445号は川辺川の東(左岸側)に沿って通っているため、道中はほぼ川を眺めながらの移動となる。

 取材時の川の流れは平静な様子だったが、ところどころに流木などが引っかかっているのが見えた。道を進むに連れ、標高は次第に高くなり、川面は見えなくなった。渓谷のような景観を見ながら、「水を溜めるにはちょうど良さそうだ」などと考えたりした。

ダム関連施設の残骸

閉鎖された管理用道路

 途中、相良村藤田という地区まで行くと、ゲートで閉鎖された奇妙な管理用道路らしきものが目に入った。近くで見てみると、「国土交通省」の看板が立っていた。グーグル・マップで調べてみると、このあたりに国土交通省九州地方整備局の「川辺川ダム砂防事務所ダム第二出張所」があったようだ。

 地元の人の話によると、「昔はダム建設予定地を見学しに、たくさんの人が来ていた」とのこと。おそらくこの道路から川に降りていったのだろうが、木が生い茂っていて、残念ながら川の様子はまったく見えなかった。445号をさらに進んで、トンネルを抜けたあたりに行くと、川面が見える場所があった。そこから見ると、ダム建設予定地とおぼしきあたりに、コンクリート構造物や柵などが散見された。造成された感じもある。

 おそらくこの場所で間違いないだろうと思ったが、念のため、対岸(右岸)側に回って、確認することにした。すると、四浦トンネルを抜けたところに、こちらにはガードレールで閉鎖された奇妙な広場のようなものがあった。広場の広さは、普通自動車10台分ほど。ここもかつては、見学用のスペースだったと思われる。立ち入り制限はないようなので、中に入ってみると、相良村が設置した川辺川ダムの紹介看板があった。建設予定地はここで間違いないようだ。

 「水と緑を活かした村づくり」と題した看板には、ダムのイメージ図とともに、こう書かれていた。

川辺川ダムのはたらき

(1)洪水調節
 80年に一度の大雨にも負けないダムの機能
(2)流水の正常な機能の維持
 下流にいつも豊かな流れを
(3)かんがい
 流域の発展に欠かせない水の補給を
(4)水力発電
 暮らしを支えるクリーンなエネルギーをつくります

 灌漑、水力発電の記述があるのを見ると、川辺川ダムの目的が治水のみで確定したのが2007年なので、それ以前に設置されたものと推測される。看板は一部がコケむし、剥がれかけていた。すっかり忘れ去られた遺物のようだった。

コケむした紹介看板

(つづく)

【大石 恭正】

(中)

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