2024年03月29日( 金 )

【特別寄稿/台湾・外交部長】世界に役立つ台湾 ともにより良い世界を

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台湾外交部長 呉釗燮

 台北駐福岡経済文化弁事処より、呉釗燮・台湾外交部長(外務大臣に相当)による、国連の取り組みへの台湾の参加の意義を説く記事を寄稿していただいたので、掲載する。

台湾外交部長 呉 釗燮 氏

 国連憲章の調印から75周年となる2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はあらゆる人々の生活に影響をもたらし、世界中がかつて経験したことのない公衆衛生の危機に直面した。このコロナの渦から抜け出すには、今こそ地球村メンバーの結束力が不可欠である。それはまさしく国連憲章が強調する多国間主義(多数の国家で1つの課題に取り組む)である。人類の健康権を始め、国際社会においてより良くかつ持続可能な未来を構築するために、世界各国が一致して努力しなければならない。台湾はその準備ができており、これらの取り組みに積極的に参加したいと望んでいる。

 新型コロナウイルス感染症の感染者を500人以下、死者7人(2020年8月時点)に抑えている台湾は、感染を封じ込めることに成功したといえる。台湾はロックダウン(都市封鎖)をすることなく、学校も2月に2週間休校にしただけで済んだ。プロ野球の試合も4月には再開し、最初の無観客試合から現在では一万人以上の観客が観戦するまでになっている。日本台湾交流協会の台北事務所代表(大使に相当)泉裕泰氏も始球式のピッチャーとして試合を盛り上げた。

 これは、中央流行感染症指揮センターの開設、厳格な水際対策と検疫の実施、透明な情報共有などを含め、台湾の迅速な感染対策によるものが大きい。我々は、国民に十分行き渡る物資が確保できてから、状況が切迫している国々に医療機器および物資の提供を始めた。台湾は計5,100万枚のサージカルマスク等の医療物資を米国、欧州連合、日本などを含む80余りの国々に寄贈した。

 国連創設75周年記念宣言において、各国政府および国家首脳らが、連帯して協力することによってのみ、パンデミックを終わらせるための効果的な取り組みができると認識された。アントニオ・グテーレス国連事務総長も、包括的かつ効果的な多国間主義が、「持続可能な開発目標」(SDGs)の実践に寄与すると発言している。世界の民主主義の模範といえる台湾が、感染の封じ込めに成功したにもかかわらず、今後も国連体系への参加が認められず、台湾の経験を分かち合うことが認められないのであれば、このビジョンは不完全なものとなる。

 国連に台湾を参加させないことは国際社会の損失であるばかりか、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を予定通り実施するための正常化と実践を阻むことになる。台湾は、SDGsに関する優れた取り組みを活用することにより、パンデミックによる混乱から国が立ち直ることを支援することができる。しかも、台湾は男女平等、経済成長率、清潔な水と衛生、格差縮小、健康と福祉などの多くのSDG指標で、OECD(経済協力開発機構)諸国に匹敵するレベルに達している。台湾のSDGsを実践する継続的な取り組みとパンデミックへの対応力は、国際社会に役立てることができる。

 しかし残念ながら、台湾の2,350万の人々は、国連施設への立ち入りを拒否され、台湾の記者やメディア関係者が、国連の会議を取材することも拒否されている。

 国連憲章の前文には、「われら連合国の人民は、…基本的人権と…、男女および大小各国の同権とに関する信念を改めて確認し」とあるが、そこで述べられているすべての人の権利と基本的自由を守る理想が空虚な言葉であってはならない。次の75年を見据え、国連が台湾の参加を歓迎することは、今からでも決して遅くない。


<プロフィール>
呉 釗燮
(ご・しょうしょう)
 1954年生まれ。国立政治大学政治学科卒業、米国ミズーリ大学で修士号(政治学)、オハイオ州立大学で博士号(政治学)を取得。国立政治大学教授を経て2002年、陳水扁総統時代に総統府副秘書長(内閣官房副長官に相当)として政界に。行政院大陸委員会主任委員、駐米国代表(大使に相当)、民進党秘書長、総統府秘書長などを歴任。18年2月より外交部長。

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