数百年の時間軸で考える河川管理、毎年の維持サイクルこそが重要(後)
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国土交通省 九州地方整備局 筑後川河川事務所
所長 松木 洋忠 氏毎年の維持こそ最重要
――防災における最大のポイントは、何でしょうか。
松木 被害が実際に起きようが起きまいが、維持管理は必要です。もちろん、災害が発生した後には早期の復旧に取り掛かりますが、災害が発生しなくても、施設の経年劣化や、川のかたちの変化などリスクが高まっていきます。
2015年の「第3回国連防災世界会議」(開催場所:宮城県仙台市)で使用された表に、「防災サイクル」というものがあります。これは「災害が起きた後にどうするか、別の災害にどう備えるか」という考え方であり、数十年に1度の災害は甘んじて受け、やがて来る次の災害までに復旧し、備えようというものです。災害の頻度が小さい西洋的な発想だと思います。
しかし、これは我が国を含め、災害が頻発する国々の事情には合いません。そこで、東洋の現実に合わせて加筆修正したものを「減災サイクル」と名づけています。このなかで最も大事なのは、「青(定期的な維持補修)」と「オレンジ(不定期の修復)」です。防災とはこれらをひっくるめた概念であり、災害発生を待って行うものではありません。事務所は筑後川本川の管理に責任をもち、県や自治体と連携して、維持管理のサイクルを充実させたいと思っています。
豪雨災害からの復興
――平成29年度九州北部豪雨からの復興事業について教えてください。
松木 平成29年度九州北部豪雨で被災した赤谷川で、私たちは河川と砂防の復旧事業を行っています。これは「減災サイクル」のなかの「赤(非常時の再建)」の仕事であり、災害発生後に少しでも早く復旧させるというものです。
赤谷川は災害規模が大きく、復旧はとても難しい状況でした。早期復旧が求められますが、用地取得や設計施工を考えると、2~3年でできる仕事ではありません。そのため、本来の管理者である福岡県から直轄権限代行の要請を受け、5年間の間、復旧事業の場数を踏んでいる国土交通省がお預かりしているものです。
すでに発災後3年が経過していますが、完成した施設の一部では防災効果が現れてきています。主な工事はこれからピークを迎えるところですが、残された期間できっちりと仕事をして、本来の管理者にお返ししなければならないと考えています。
(了)
【茅野 雅弘】
<PROFILE>
松木 洋忠(まつき・ひろただ)
1967年生まれ。北九州市出身。1989年から国土交通省(旧・建設省含む)の本省および各地方整備局(九州、北陸、四国、近畿)で勤務。JICA専門家(ラオス、ベトナム)や遠賀川河川事務所長、国土交通省水管理・国土保全局河川計画課国際室長などを経て、2019年7月に同省九州地方整備局筑後川河川事務所長に就任した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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