2024年03月29日( 金 )

菅義偉政治路線の「知られざる真実」

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「菅義偉氏が後継者になることを決めたのは米国、そして米国の支配者である巨大資本。多国籍企業の利益極大化のための方策が強要される『植民地』の現状を脱するには、日本の市民が目を覚ますことが必要だ」と訴えた9月5日付の記事を紹介する。


7月20日付ブログ記事
10月25日衆院総選挙が根強くささやかれるワケ
に記述した10月25日衆院総選挙の可能性が高まっている。

権力を維持する者にとって最重要イベントが選挙だ。
そのなかで最重要なのが政権の枠組みを決める衆院総選挙。
選挙さえ乗り切れば、あとはどうでもよい。

政権を私物化しようが、利権をむさぼろうが、思いのままになる。
衆参両院で過半数議席を確保しておけば、政権暴走の歯止めもきかなくなる。

日本政治が本格的に劣化したのは2013年7月からだ。
安倍内閣はメディアを総動員して「ねじれ解消」を叫んだ。
その結果として自公による衆参支配が生じ、安倍暴政が猖獗(しょうけつ)を極(きわ)めることになった。

私は2013年7月参院選に向けて
アベノリスク』(講談社)
で警鐘を鳴らしたが、ねじれが消滅して安倍暴政が吹き荒れた。

安倍内閣の7年8月カ月に大きな成果はない。
安倍首相が掲げた「拉致問題解決」「北方領土問題解決」「憲法改正」はすべて1ミリも動かなかった。
「アベノミクス」の結果を象徴しているのが日本の実質GDP。

2012年10-12月期の実質GDP(季調済年率換算)は498兆円だったが、2020年4-6月期の実質GDPは485兆円になった。
第2次安倍内閣が発足してからの実質GDP成長率平均値(季調済前期比年率)はマイナス0.1%。
民主党政権時代のプラス1.7%をはるかに下回る。

非正規労働者の比率は激増し、年収200万円以下の給与所得者が1100万万、人に達した。
労働者1人あたりの実質賃金は約6%も減少した。

間違いなく世界最悪の経済パフォーマンスを生み出した。
下流に押し流された労働者の息の根を止めるかのように、消費税の税率が5%から10%に引き上げられた。

安倍内閣が実行したのは
特定秘密保護法制定、集団的自衛権行使容認憲法解釈変更、戦争法制制定、TPP参加、共謀罪創設、種子法廃止、漁業法改定、水道法改定、スーパーシティ法制定
などである。
悪政の限りを尽くした。

さらに、下村博文氏、甘利明氏の疑惑を闇に葬った。
安倍首相自身の問題である
森友疑惑、加計疑惑、桜を見る会疑惑
が泥沼化し、安倍首相自身が深く関与したとされる河井克行氏夫妻の公選法違反事件が立件されたが、安倍首相自身への捜査はまだ着手されていない。

内閣支持率が低下し、次の衆院総選挙で国民から厳しい審判が下される可能性が高まった。
この危機に対応して大がかりな三文芝居が創作され、現在上演されている。
首相退陣を美談に仕立て上げ、出来レースの後継者選出をメディアがはやし立てる。

すべては次の総選挙で自公が大敗しないための工作活動である。
これまでの利権分配の構造を変えぬために、安倍-菅継承は既定路線だった。
すべてがシナリオ通りに実行されている。

コロナ対策を契機に「ドケチ財政」が「バラマキ財政」に転換したことが年内衆院総選挙シナリオを意味することは明白だった。
第1次、第2次補正予算の規模は合計で58兆円に達する。
国家予算の半分以上の規模の予算が創設された。

この予算が衆院選買収資金としてフル活用されることはいうまでもない。
10月25日総選挙を前提に政権刷新勢力が結集しなければならない。
合流新党が「憲法破壊を許さない」「原発ゼロ」「消費税減税」のつの3旗を明確にして発足する。

この基本政策を共有する市民と政治勢力が「政策連合」を構築して候補者一本化を実現させる必要がある。
政策基軸の大連帯を構築できれば、自公と互角に戦える。
メディアが創作する自公の茶番劇を粉砕して2020政治決戦を勝ち抜き、日本政治を浄化しなければならない。

メディアが創作した美談シナリオで内閣支持率が上昇したとされる。
本当かどうからわかない。
内閣支持率が上昇したと発表されているだけだ。

メディアが発表する数値を取り締まる法律もない。
罰則もない。
実際に世論調査不正の実態も明らかになっている。

庶民を騙すことなど、権力とメディアにとっては朝飯前だ。
森友、加計、桜、河井夫妻事件、そしてコロナ対策など、国会の存在意義を問われる重要問題が山積している。
安倍内閣は説明責任さえはたしてこなかった。

憲法53条の規定に基づいて国会召集が要求されたにもかかわらず、安倍内閣は憲法を踏みにじる対応を示してきた。
この不誠実な姿勢をメディアは攻撃したのか。

安倍退陣=菅後継=早期解散総選挙のシナリオは早い段階から描かれてきた。
菅義偉氏が後継者になることを決めたのは米国である。
米国の支配者は巨大資本である。
この巨大資本が日本をも支配していることは当然だ。

巨大資本が2001年の小泉政権発足時から日本の経済植民地化を推進してきた。
いわゆる「新自由主義」と表現される、多国籍企業の利益極大化政策が日本に強要されてきた。
巨大資本の僕(しもべ)となって多国籍企業の利益極大化に協力する者だけが重用されてきた。

その流れが、小泉-安倍-菅の系譜なのだ。
安倍成長戦略の骨格は
農業自由化、労働規制撤廃、民営化(=営利化)、特区創設、法人税減税だ。
これらのすべてが、多国籍企業の利益極大化のための方策だ。

究極の「売国政策」である。
安倍-菅ラインは「維新」勢力と近い。
「維新」が主張しているのが上記の「成長戦略」だ。

「成長戦略」と表現すると聞こえが良いが、「誰の」「何の」「成長」戦略なのかが重要だ。
「大資本」の「利益」の成長を目指すのが「成長戦略」である。

このことは、裏を返すと
「市民」の「不利益」の成長を意味する。
労働規制の撤廃は労働コストを削減するための方策だ。

その結果として生じているのが、労働者1人あたりの賃金の減少である。
非正規労働者比率の大幅上昇である。

「民営化=営利化」によって大資本は超過利潤を獲得する。
市民は割高な水道料金を支払うことを強要されることになる。
規制撤廃で危険な遺伝子組み換え食品が流入し、危険な農薬が容認される。
大資本は利益を拡大するが、市民の命と健康が犠牲にされる。

日本の政権トップを決定しているのは米国の支配者である。

この系譜に属する者はトップになる前に必ず米国を訪問して忠誠を誓う。
菅直人氏も菅義偉氏もトップに引き上げられる直前に訪米して忠誠を誓っている。

この植民地の現状を脱するには、日本の市民が目を覚ますことが必要だ。
小泉内閣、安倍内閣が推進してきた「構造改革」「成長戦略」の本質を見極める洞察力をもつことが必要だ。
多国籍企業の利益を優先して国民に不利益を強要する系譜を引き継ぐ後継者として、いま菅義偉氏がクローズアップされている。

選挙のときだけ、いかなる要因でもよいから票を集める。
財政資金バラマキは公選法違反の対象外であるから無制限になる。
票を集めて権力を維持してしまえば、あとは有権者のことなど微塵も考えない。

こんな政治が横行している。
民主主義制度を採用している以上は、選挙というハードルだけは超えなければならないが、それ以上も以下でもない。

逆にいえば、選挙というハードルさえクリアしておけば、いかなる無法も暴政も、何の問題もないと捉えられている。
だから、市民が目を覚まして、選挙に真剣に取り組むことが何よりも大事だ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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