2024年04月21日( 日 )

BIS第170回例会~ワシントンDC、ローマを結ぶオンライン開催(7)

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 8月30日(日)の午後1時30分~5時まで、日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS、中川十郎会長・名古屋市立大学特任教授)第170回例会がZOOMを用いてオンラインで開催された。ZOOMによる開催は、29年の歴史を誇るBISで初めての試みだ。
 今回は「新型コロナ後の世界」をテーマとして、医学や経済学、社会学など幅広い分野の発表があった。当日は東京だけでなく、ワシントンDC、ローマ、仙台、大阪、福岡などから50名を超える有識者が参加した。

社会の脆弱性を浮き彫りにした新型コロナ

 井出亜夫氏((一財)国際経済連携推進センター理事)は「コロナと現代社会」の発表のなかで、新型コロナは社会の脆弱性を浮き彫りにしたと語った。

 第2次世界大戦の終了後、戦後の復興や植民地の独立により、経済発展による楽観的認識が世界を支配した。とくにベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結した後、市場経済の一般化、グローバル社会の進展などの楽観的展望が蔓延した。フランシス・フクヤマ氏の『歴史の終焉』、トーマス・フリードマン氏の『フラット化する世界』はその代表であった。

 しかし、その結果として、トマ・ピケティ氏が『21世紀の資本』で指摘したように、貧富の格差拡大とそれに起因する政治・社会問題が生み出され、混沌たる事態となっている。井出氏は、同書が世界的ベストセラーになった理由として、「世界の多くの人々が、今日の市場経済システムの不安定を自覚したからに他ならない」と語る。

 しかし、歴史を振り返ると、それらの問題は1962年に出版されたレイチェル・カーソン氏の『沈黙の春』(※1)、72年に発表されたローマクラブの『成長の限界』(※2)、同年にスウェーデンのストックホルムで開催された「国連人間環境会議」(※3)などで指摘されてきた。

 その後、92年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議」を経て、一連のCOP会合、2030年までに達成を目指す国連の持続可能な開発目標(SDGs)の動きにつながっている。井出氏は、今回の新型コロナパンデミックの防御や拡大防止策の多くの部分に、下記のSDGsの17の目標が関係していることを指摘した。

SDGs―2030年に持続的発展17目標の達成を目指す

 (1)貧困をなくそう
 (2)飢餓をゼロに
 (3)すべての人に健康と福祉を
 (4)質の高い教育をみんなに
 (5)ジェンダーの平等を実現しよう
 (6)安全な水とトイレを世界中に
 (7)エネルギーをみんなにそしてクリーンに
 (8)働きがいも経済成長も
 (9)産業と技術革新の基盤をつくろう
 (10)人や国の不平等をなくすような対策を
 (11) 住み続けられるまちづくりを
 (12) つくる責任 つかう責任
 (13)気候変動に具体的な対策を
 (14)海の豊かさを守ろう
 (15)陸の豊かさも守ろう
 (16)平和と公正をすべての人に
 (17)パートナーシップで目標を達成しよう

(つづく)

【金木 亮憲】

 ※1:農業・自然界と化学製品の相克問題についての本。
 ※2:人口増加や環境汚染などがこのまま続くと、100年以内に地球上の成長は限界に達すると警鐘した。
 ※3:先進工業国は経済成長から環境保全への転換、開発途上国においては、開発の推進と援助の増強が重要であるとした。

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