2024年04月25日( 木 )

中産階級を安定化させることが平和につながる~DEVNETのはたすべき役割とは DEVNET INTERNATIONAL・アザーニュース

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DEVNET INTERNATIONAL・アザーニュース

 Net I・B-Newsでは、世界の有識者約14,000名に配信しているニュースサイト「OTHER NEWS」(配信言語は英語、スペイン語、イタリア語)に掲載されているDEVNET INTERNATIONALのニュースを紹介している。DEVNETは日本に本部を持つESCOS認証カテゴリー1に位置付けられている一般社団法人。今回は平和構築などDEVNETの役割に関する9月25日付の記事を紹介する。(該当記事


DEVNET INTERNATIONAL 理事 髙橋一生 博士

 ――高橋一生先生は国際機関(とくにOECD)、国際財団、研究所、大学などを通じて多様な国際的活動を展開し、とくに平和、国際開発の分野で国際社会をリードしてきました。現在もいろいろな活動に携わっており、そのうちの1つにDEVNET Internationalの理事としての活動が挙げられます。DEVNET Internationalはこれから活動が本格化するようですが、国際社会が激変しつつあるなか、平和構築への貢献をどのように見ていますか。

 高橋 DEVNET Internationalの主要目的は、途上国における中小企業の振興を通じて途上国の持続可能な発展を手助けすることです。これは半世紀強にわたる国際開発のなかで、スポッと欠けていた極めてユニークかつ重要な視点です。平和構築への貢献という観点からも決定的に重要な役割が期待されます。

DEVNET INTERNATIONAL髙橋一生 理事 ( 右)
明川文保 総裁( 左)

 現在のような地球規模の激変期では、平和が脅かされる状況が生まれやすくなります。平和構築には基本的に(1)紛争予防段階、(2)紛争の調停および解決、(3)平和構築という3つのフェーズがあります。

 まず第1のフェーズは、平和が脅かされはじめ、状況の悪化を防ぐことが課題になる紛争予防段階。広い目で見れば、平和が脅かされる状況自体を未然に防ぎ、国際社会の安定を図ることまで含まれます。この紛争予防は、現在の国連事務総長グテーレス氏の主要関心事項でもあります。

 第2のフェーズは、紛争が発生してしまった場合の対応です。ここでは紛争の調停、さらには実力行使による紛争の解決を図らざるを得ない場合も出てきます。

 そして、第3のフェーズが平和構築となります。冷戦後の1990年代、途上国や社会主義国から民主主義国に転換しようとして多発した内戦後の状況に対し、国際社会が平和構築に取り組みました。それ以降、国際社会において重要な課題となっていきました。

 この3つフェーズのなかで、今後DEVNET Internationalが重要な役割をはたし得るのは、(1)紛争予防段階、(3)平和構築の2つです。(2)紛争の調停および解決ではたす役割はあまりありません。

 (1)紛争予防段階で重要になるのは、国家間の緊張状態に対し、各国の中産階級における雇用の安定を図ることです。緊張状態を悪化させる要因は多々ありますが、中産階級の安定、とくに雇用の安定は、悪化を防ぐ重要なカギになります。

 そのため、DEVNET Internationalが担う「各国の雇用の中心である中小企業をしっかりと護る、発展させる」役目が重要です。これは緊張した国際社会下においても、粛々と作業を続けていくことが重要な意味をもっています。また、一国内で内戦の兆しが出てきたときに重要になるのは、ぶつかり合うそれぞれのグループ(民族、宗教、地域など々)の雇用を安定させることです。ここでも中小企業振興が決定的に重要な役割をはたします。さらに、より長期的視点に立てば、中小企業の振興を通じて、安定した中産階級を幅広く育成することは民主主義の基盤を強化することにもなります。

 中産階級と民主主義の関係は単純ではなく、必ずしもこの2つは直結しませんが、この両者の関係が密であることはたしかです。(1)紛争予防段階について、国連事務総長がとくに強い関心を示していることから、国連機関との連携を探ることも大事でしょう。

 (3)平和構築は、国内紛争との関係でこの四半世紀ほど展開されてきました。内戦の終結は反乱勢力の国内社会への統合、反乱地域の自治権拡大、独立という3つの落とし所がありますが、いずれの場合もプロセスは一定しています。

 まず、和平合意がなされると国内避難民を主な対象とした人道援助、その後反乱軍の武装解除などの平和構築、多くの場合その途中から開発。この3段階で進みます。この全体を広義の平和構築と呼びます。この四半世紀の間、100以上の平和構築作業が行われてきました。

 多くの場合、国連が中心となって展開されてきました。成功事例が多くありますが、失敗もありました。失敗は紛争の再発をもたらす場合もあります。失敗の主な理由は、狭義の平和構築から開発プロセスへの移行がうまくいかなかったです。「継ぎ目のない移行」の課題と言われています。この課題は認識されているものの、「どのように(how)」という点に関して、まだ明確な解決策が得られていません。この課題の1つの解の可能性に中小企業育成があり、DEVNET Internationalの出番があります。

 昨今、地球社会はコロナ・パンデミック後の持続可能な開発のための新たなアプローチを模索し初めています。80年代の冷戦期、第三世界のソリダリティを通じた世界の橋渡しとしてロベルト・サビオ氏が始めたDEVNET Internationalを明川氏が引き継ぎ、ベトナム、タイなどと協力をはじめに、極めてユニークな国際開発が始まろうとしています。
アジアを起点とした明川アプローチの世界展開は、激動期に於ける平和の創造も視野に入れたものになるであろうと思います。

(了)

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