2024年04月19日( 金 )

横浜市役所新庁舎が使用電力を100%再エネに~太陽光発電の卒FIT、焼却工場バイオマス発電、省エネ5割減

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 横浜市役所新庁舎では、2020年度に使用電力を再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%に転換する。市内のごみ焼却工場でバイオマス発電された電気を買い取り、太陽光発電などの市内の卒FIT電力を東京電力エナジーパートナー(株)(以下、東電)から調達。建物で使用するエネルギーは省エネ化で約5割減を実現している。

再エネ電力の調達~環境価値の取引も

横浜市役所新庁舎

 横浜市役所新庁舎(2020年1月31日竣工)の電力需要(計画値)の1,260万kWh のうち、庁舎内発電分が約280万kWhであり、焼却工場から420万kWh、東電から560万kWhを調達する計画である。

 焼却工場がごみ焼却で発電する電力420万kWhのうち、再エネは約6割。焼却される「燃えるごみ」のうち約6割を占める生ごみや紙などはバイオマスだが、約4割を占めるプラスチックごみは石油由来でバイオマスとは認定されないためだ。

 東電から調達する電力560万kWhのうち、すべてが太陽光発電の卒FIT電力などの再エネ100%の電力というわけではない。横浜市役所総務局管理課新市庁舎整備担当課長・菅野和広氏は、「焼却工場の余剰電力は新庁舎に送電する以外に、電力小売事業者に再エネ0%の電力として売却している。この電力の環境価値(CO2排出を削減する価値)を再エネではない電力に当て、再エネ100%を実現している」と話す。

 再エネ100%の電力を自ら発電、または発電所から直接調達しない限り、使用電力の再エネ100%化を実現するためには環境価値の取引が必要となるようだ。

 また、東電から調達する卒FIT電力(300万kWh)の単価は、通常の電力よりも割高になる。焼却工場からの単価の安い電力を利用してコストのバランスを取り、新庁舎の使用電力コストを予算内に収める。

使用エネルギー約5割減の省エネ技術

二重窓と換気パネル

 建物の省エネ化により、新庁舎の省エネルギー性能指標(BEI)は0.48となり、一般的な建物に比べて、使用エネルギーはおよそ5割減になる。

 省エネ化のため、空調は輻射式の冷暖房を採用。天井にお湯や冷水を循環させるパネルを設置する、吹き出し口のない冷暖房だ。また、通常の高層ビルでは窓が開かないため、窓からの自然換気ができないが、新庁舎(32階建て)では、自然換気ができるように、窓と窓の間に換気パネルを設けて冷暖房の使用を減らしている。さらに、建物の各階の階段、建物のコーナーなどに自然換気口(エコボイド)を設け、低層部から高層部まで風の通り道をつくっている。

オープンスペースのアトリウム

 窓は熱が逃げやすいため、2重窓(ダブルスキン)の断熱構造。新庁舎の外装はほぼガラス張りで、自然光を取り入れて照明数を削減。LED照明は台数をしぼって高出力のものを設置することで、エネルギー利用効率を高めているという。また、地中熱利用として、地下の杭のなかに設けた循環パイプに水を通すことで、屋根付きオープンスペースのアトリウム(三層吹抜け、約1,200m2)の冷暖房を行っている。

停電時の災害対策

燃料電池

 新庁舎では電力コスト削減のために各フロアの電力消費を監視しているほか、電力需要がピークとなる時間帯に照明を一時的に落としたりすることで、最大使用電力を下げる機能をもっている。災害などの停電時には、太陽光発電(100kW)や蓄電池、EV(電気自動車)充電器を組み合わせて電力供給に活用。燃料電池もガスが供給されていれば発電を継続する。

 横浜市では、25年をメドに18区役所の使用電力を再エネ100%、50年に市役所全体で再エネ100%を目指す。「将来にわたり再エネ100%を実現するための調達先を探すことが課題。加えて、再エネ電力は普通の電力より単価が高いため、コストをどう抑えるかという課題もある」(菅野氏)。

使用エネルギー約5割減の主な省エネ技術(横浜市新市庁舎整備パンフレットより)

【石井 ゆかり】

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