2024年04月25日( 木 )

新型コロナの防疫対策で世界の先頭を走る台湾と意見交換(2)

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 2020台湾最新ビジネスセミナー「withコロナ時代‐日台で切り拓く新ビジネスチャンス」(主催:台日産業連携推進オフィス(TJPO)、協力:(株)電波新聞社)が9月15日、TKP品川カンファレンスセンターで開催された。
 今回のセミナーは新型コロナの影響を受けて、現地会場とオンラインのいずれでも参加できるハイブリッド方式で開催された。現地会場では約40人、日本・台湾の二元中継のオンラインで約130人が参加した。

コロナ後に打ち出されたニュー・ノーマルの視点

川村 直毅 氏

 川村直毅氏(NTTデータ先端技術(株)ソフトウェアソリューション事業部営業担当部長)は、「コロナ禍におけるITの役割~5GとAI~」について講演した。

 川村氏は「新型コロナの影響で、トラフィック(※1)が2月からの緊急事態宣言中に少し落ち込んだが、8月まで大幅に増えた。今後も若干の呼び戻しは考えられるが、新型コロナ以前の状態には戻らないだろう」と語った。

 その理由は、新型コロナ後も、企業のテレワーク、大学などのオンライン授業、オンラインショッピング、オンラインによる遠隔医療などが、著しく増大すると考えられるためだ。コロナ禍で対面が封じられたために、通信が不可欠となった。このことを前提に、川村氏は以下のように語った。

 日本政府は今回の動きに歩調を合わせ、7月17日に「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定しました。基本的には、「Society5.0」のデジタル化です。すなわち、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会を目指し、「国民生活の利便の向上」「安全・安心の追求」「データの資源化と最大活用」「人にやさしいデジタル化」「効率化追求」を実現する計画です。かねてから言われていたことですが、そのスピードは新型コロナの影響で加速しました。

 新型コロナ対策でみえてきた課題や目指す方向として、これまでの「社会の仕組みの変化」「ライフスタイルの変化」「ITの変化」に加えて、今回は新たに「コロナ後のニュー・ノーマルの視点」が打ち出されました。それは、「対面・高密度から『開かれた疎』へ」「一極集中から分散へ」「迅速に危機対応できるしなやかな社会へ」というものです。

 

 ここで、川村氏はニュー・ノーマルに移行する「移行4原則」として、(1)テールリスクを重視する、(2)世界をリードする、(3)誰も取り残されない、(4)漸進主義ではなく、ショックセラピー型で抜本的に移行する、ことが重要であると指摘した。

DXはIT運用が前提の「業務プロセス変革」

 DXすなわちデジタルトランスフォーメーション(※2)には、3つのフェーズがあります。

<第1フェーズ:IT利用による業務プロセスの強化>
 業務の効率化、品質向上を目的に整えられた業務プロセスにITを用いることで、人間の曖昧さをできる限り排除した運用支援・強化を実現する。

<第2フェーズ:ITによる業務の置き換え>
 IT自身に業務を代替させ、自動化を実現。セルフレジやRPA(Robotics Process Automation、業務自動化)などが該当。

<第3フェーズ:業務をITへ、ITを業務へとシームレスに変換>
 人間が運用することを前提につくられた業務プロセスを、ITが運用することを前提につくり変える「業務プロセス変革」。

 

 以上を、解説したうえで、川村氏は「DXを履き違えてはいけません。単に電子化すればいいというものではありません」と語り、DXは第2フェーズでとどまることなく、第3フレーズまで進む必要があると強調した。

※1:インターネットやLANなどのコンピュータなどの通信回線において、一定時間内にネットワーク上で転送されるデータ量のこと。 ^

※2:IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念。2004年にスェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱。 ^

(つづく)

【金木 亮憲】


<INFORMATION>
台日産業連携推進オフィス(TJPO)

 台湾行政院が2011年認可した「台日産業連携架け橋プロジェクト」により12年3月に設立。関連部会の資源を統合し日台双方の産業連携をより一層密接にすることで、日台間における全体的な産業のレベルアップを図り、共同でグローバル競争力と産業チェーンを高めることを目的としている。
日台産業間の連絡窓口として、セミナーや商談会を通じて、産業の連携案件、プロジェクト追跡業務などのサポートを行うとともに、相互に派遣団による交流を行っている。

日台OBネットワーク
 2007年設立の日台産業の連携に熱意を持つ企業人で構成されたボランティア団体。台湾政府の重点政策方向、産業の趨勢、将来の推進方向、日台の連携成果など日台双方の重要な情報交換の場となっている。現在の会員は約360人。
 組織は、最高顧問:安藤国威 ソニー(株)元社長兼COO、会長:峯岸進 台湾Sony元董事長。副会長:高杉春正 台湾TDK元董事長と揚原浩 台湾富士通元董事長、関西地区会長:松本光司 双日台湾元董事長で構成されている。毎年日本で1~2回の交流会を開催。会員ほか、日本企業の各界名士および台湾政府高官や産業界関係者も参加する。

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