2024年04月20日( 土 )

新型コロナの防疫対策で世界の先頭を走る台湾と意見交換(4)

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 2020台湾最新ビジネスセミナー「withコロナ時代‐日台で切り拓く新ビジネスチャンス」(主催:台日産業連携推進オフィス(TJPO)、協力:(株)電波新聞社)が9月15日、TKP品川カンファレンスセンターで開催された。
 今回のセミナーは新型コロナの影響を受けて、現地会場とオンラインのいずれでも参加できるハイブリッド方式で開催された。現地会場では約40人、日本・台湾の二元中継のオンラインで約130人が参加した。

ヒントン教授がケタ違いの認識率で優勝

 川村氏は「AI」(人工知能)について、「第1次、第2次ブーム後の冬の時代を経て、AIは現在第3次ブームにある。ディープラーニング(深層学習)が第3次ブームのエポックメーキングになっている」といい、次のように話した。

 ディープラーニングとは、コンピュータの機械学習において、人の脳神経回路を模したニューラルネットワーク(神経回路網:脳機能の数学モデル)を多層的にすることで、コンピュータ自らがデータに含まれる潜在的な特徴をとらえ、より正確で効率的な判断を実現させる技術です。音声認識と自然言語処理を組み合わせた音声アシスタント、画像認識などのパターン認識の分野で実用化されています。

 ディープラーニングは、2012年の大規模画像認識コンテストILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)で、カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授がこの技術を使い、他者のエラー率は26%だったのに対し、トロント大学は15%を実現。ケタ違いの認識率の差で優勝したことがきっかけです。これまでは、人間(職人)が経験とカンでつかみ取ってきた「特徴」を、ディープラーニングによって、計算機が自動的につかみ取ることが可能になりました。

川村 直毅 氏

 川村氏は「AIは何もしなければ、赤ちゃんと同じ。人間がAIの学習の筋道をつけなければ機能しません」といい、「AIは、(1)入力に従い算出された出力を確認、(2)期待された出力との差を誤差として算出、(3)誤差が最小となるように各シナプス(ニューロン同士の接合部分)の重みづけを後段から前段に向けて調整、という3つのステップで学習します。たとえば自動運転でも、さまざまな時間帯(昼夜)、天候(晴れ、雨など)の状況で、車道、歩道、建築物、植裁、空、他の車、人物などの区分けを学習させる必要があります」と語った。

ディープラーニングの「Black Box」「Bias」問題

 川村氏は、「一口にAIと言っても、その認識は『RPA(業務自動化)』『コンピュータに学習させたうえで、自動的に答えを出す機械学習(ML)』『ディープラーニング(深層学習)』などと、人によってAIに関してさまざまな捉え方をしている。どのレベルのAIを使うのかを見極め、自覚することが必要」と指摘した。

 川村氏は、下記の「ディープラーニングの抱える3つの課題」を提示し、その使い方には十分注意が必要であると、話を締めくくった。

(1)現時点では、結果を導いた理由がわからない(Black Box問題)。
(2)学習データに偏りがあると、結果も偏る(Bias問題)。
(3)100%の答えは出さない。

(つづく)

【金木 亮憲】


<INFORMATION>
台日産業連携推進オフィス(TJPO)

 台湾行政院が2011年認可した「台日産業連携架け橋プロジェクト」により12年3月に設立。関連部会の資源を統合し日台双方の産業連携をより一層密接にすることで、日台間における全体的な産業のレベルアップを図り、共同でグローバル競争力と産業チェーンを高めることを目的としている。
日台産業間の連絡窓口として、セミナーや商談会を通じて、産業の連携案件、プロジェクト追跡業務などのサポートを行うとともに、相互に派遣団による交流を行っている。

日台OBネットワーク
 2007年設立の日台産業の連携に熱意を持つ企業人で構成されたボランティア団体。台湾政府の重点政策方向、産業の趨勢、将来の推進方向、日台の連携成果など日台双方の重要な情報交換の場となっている。現在の会員は約360人。
 組織は、最高顧問:安藤国威 ソニー(株)元社長兼COO、会長:峯岸進 台湾Sony元董事長。副会長:高杉春正 台湾TDK元董事長と揚原浩 台湾富士通元董事長、関西地区会長:松本光司 双日台湾元董事長で構成されている。毎年日本で1~2回の交流会を開催。会員ほか、日本企業の各界名士および台湾政府高官や産業界関係者も参加する。

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