2024年04月17日( 水 )

新型コロナの防疫対策で世界の先頭を走る台湾と意見交換(6)

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 2020台湾最新ビジネスセミナー「withコロナ時代‐日台で切り拓く新ビジネスチャンス」(主催:台日産業連携推進オフィス(TJPO)、協力:(株)電波新聞社)が9月15日、TKP品川カンファレンスセンターで開催された。
 今回のセミナーは新型コロナの影響を受けて、現地会場とオンラインのいずれでも参加できるハイブリッド方式で開催された。現地会場では約40人、日本・台湾の二元中継のオンラインで約130人が参加した。

商談後、注文を受けて初めて実績になる

 台湾からの企業紹介後、講演会場は再び東京に移り、2つめの講演に入った。

田中 裕之 氏

 サンワテクノス(株)代表取締役社長・社長執行役員の田中裕之氏が、「コロナ禍における日本のビジネス展望」について講演した。サンワテクノスは、産業用エレクトロニクス関連の装置、部品を扱う独立系専門商社(東証一部上場)で、26の海外拠点を有し、1994年から台湾とのビジネスを行っている。

 田中氏は、会社の歴史、概要、取り扱い製品を説明したうえで、セールス部隊を抱える多くの日本企業の共通の悩みとなっている点に次のように言及した。

 4月7日に緊急事態宣言が出され、5月25日に緊急事態宣言は解除、6月19日には、他府県をまたがる移動についても解除になりました。緊急事態宣言の直後、サンワテクノスでは、社員の80%を在宅勤務としました。IT関連の仕事は多くの実績があったため、在宅勤務を始めても、チームス(Teams)を駆使してテレビ会議などを行い、ハードウェアとしてのコミュニケーション体制の構築には問題がありませんでした。私は週2回ほど出勤し、社員のテレビ会議などを時折見ていました。最初は、セールスマンが真面目にテレビ会議に出席しているのを見て、「好ましく、いいことだな」と感じていました。

 しかし、ある時「これはまずいぞ」と気づきました。セールスマンは、顧客と商談し、注文をいただいて、初めて実績になります。そのセールスマンが、在宅で、毎日会議を行っているのです。そのうち、社内のみでなく、社外の顧客ともテレビ会議を行うようになりました。ところが、ここでも問題が起こりました。それは要件が済むとすぐに、チームスのスイッチを切ってしまうことです。

 テレコミュニケーションはたしかに便利ですが、次のセールスの種やヒントは、仕事後の雑談から生まれ、それがビジネスにつながります。「これは困った」と感じました、世間では「3密」は絶対にダメ(避けなさい)となっていますが、この状況は我々のようなセールスを中心とする会社にとっては、致命的ともいえると改めて気づきました。

 さらに、設備投資の先送りという問題が起こりました。サンワテクノスの仕事は、完全にB to Bです。顧客は、投資意欲があっても先行きが不透明であるときは、投資を控える傾向にあります。「今は投資する時期ではない」と考えるためです。

 もちろん、悪い話ばかりではありません。マスクなどは、これまでほとんど中国で製造していましたが、今は日本企業も日本だけでなく、アメリカやヨーロッパにも工場をもち、製造を始めています。従来はマスクなどを製造していなかった会社や地域でもマスクをつくり始めたため、設備機械や部品などの注文は増えています。

顧客の生の声を聞けないことを懸念

 新型コロナ騒動の初めのころ、3~4月に「中国の武漢などからの物流が止まり、物が入らない」という情報が流れ、多くの企業で「先に製品を確保しなければならない」という動きがあり、多くの受注を先行していただきました。しかし、その後はパタッと物が売れなくなり、現在まで厳しい環境が継続しています。

 新型コロナ以前は、顧客を訪問し、密着、密接して、さまざまなヒントをいただき、それが次の商売につながりました。しかし、現在は企業によって対応に温度差はありますが、多くの企業から「訪問は避けてほしい」という声があります。

それは、顧客が大きな工場を抱えており、万が一、感染が起こり、工場を停止する事態になったら、取り返しがつかないためです。個別の面談さえ、ままならない状況が続いています。

 海外顧客も同様です。私は通常ならば少なくとも月に1回は海外出張しますが、今年は1月のアメリカ出張を最後に、海外には出張していません。訪問した国で入国時に2週間待機、帰国後の2週間待機では、ほとんど仕事にならないためです。従って海外拠点、お客様との会談もリモートのみです。さらにいえば、アメリカなどでは州をまたぐ移動もできないため、海外拠点の担当者は現地の顧客との対面での商談ができていません。正直、顧客の生の声が聞けないことに不安を感じています。

(つづく)

【金木 亮憲】


<INFORMATION>
台日産業連携推進オフィス(TJPO)

 台湾行政院が2011年認可した「台日産業連携架け橋プロジェクト」により12年3月に設立。関連部会の資源を統合し日台双方の産業連携をより一層密接にすることで、日台間における全体的な産業のレベルアップを図り、共同でグローバル競争力と産業チェーンを高めることを目的としている。
日台産業間の連絡窓口として、セミナーや商談会を通じて、産業の連携案件、プロジェクト追跡業務などのサポートを行うとともに、相互に派遣団による交流を行っている。

日台OBネットワーク
 2007年設立の日台産業の連携に熱意を持つ企業人で構成されたボランティア団体。台湾政府の重点政策方向、産業の趨勢、将来の推進方向、日台の連携成果など日台双方の重要な情報交換の場となっている。現在の会員は約360人。
 組織は、最高顧問:安藤国威 ソニー(株)元社長兼COO、会長:峯岸進 台湾Sony元董事長。副会長:高杉春正 台湾TDK元董事長と揚原浩 台湾富士通元董事長、関西地区会長:松本光司 双日台湾元董事長で構成されている。毎年日本で1~2回の交流会を開催。会員ほか、日本企業の各界名士および台湾政府高官や産業界関係者も参加する。

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