2022年07月06日( 水 )
by データ・マックス

第一生命が詐欺容疑で『実録 頭取交替』登場の元社員を刑事告発 (5)

 連載(3)で面談した被害者Aさんが正下文子の人となりについて語ってくれた。それによると正下の旧姓は神足。山口県立徳山女子高校(現・徳山高校)時代に弁論大会に出場し、教育者だった父親から時間内に話す術の特訓を受けて、「キュリー夫人」をテーマに語り、好評を博したと自自画自賛していたという。英雄氏と結婚して正下姓に。本人曰く、第一生命関係の講演などに講師として出席しても、ペーパーなしで時間内に話をまとめることができると自慢げに話していたという。ちなみに妻の秘書的な仕事をしていた夫は10年前に亡くなっている。

 正下の服装は兵庫県・芦屋の貴婦人のような装いだったという。「いずみ」(周南市では高級な女性向け仕立屋/今はない)のスーツ、バッグ、時計の超高級品以外は一切身に着けない正下の主義についてAさんは「女性の妬みを買わず、むしろ信用を得るための、したたかな計算だったと思う」と語ってくれた。

 下記を見ていただきたい。正下が差し入れた直筆の「御預り証書」の写しで、それとは別に「御預り証書」の追記の部分一部抜粋したものである。

預かり証書などから見えるもの

◆金額欄は消しているが10万円の収入印紙に割印をしており、1億円を超えていることがわかる。
また、「(正下文子特別枠内)」「正下文子死亡の折もご迷惑をおかけしません」と追記するなど、Aさん夫婦の信用を得るためにただし書きを入れており、用意周到であったことが端々から読み取れる。

◆期間は6カ月で、返済期限は平成31年9月6日。利息は消してあるが30%の高金利。期限がきても返済せず、預かり証書も切り替えることもなかったが、Aさんはそのうち返してくれるものとそのときはまだ、正下文子を信用していたと語った。

◆返済できないことを隠蔽し、信用を繋ぎ止める動きについて
・Aさんの夫は脳出血で倒れて自宅で療養していたが、昨年亡くなった。その葬儀に参列した正下は、「周りの人が訝るほどの涙を流した」という。実態は返済できないこと隠すための、演技だったのだろうと振り返る。

まとめ

 足が悪く10月2日まで下関市内の病院に入院していた山口銀行の田中耕三特別社友も、正下に長年騙され、利用され続けた被害者の1人なのかもしれない。
 ただ、はっきりいえることは、第一生命は「天才的なペテン師」である正下文子を懲戒免職し刑事告訴しているが、「特別調査役」という全国初の役職に任命した第一生命も正下と共犯であり、、金融詐欺の全責任を負うべきではないだろうか。

追記

 この記事を書いていた11日(日)の夕方、週刊誌の記者から田中耕三山口銀行特別社友の社宅(下関市)に行ったとき、たまたま玄関から出てきた本人と妻、付き添いの娘の3人と会うチャンスに恵まれたという話を聞いた。

 本人は足に包帯を巻いて痛々しい姿だったという。そこで、「正下さんが金銭詐欺で刑事告訴されていますが」と声を掛けると、「10月2日まで病院に入院していたのでそれは知らない」と述べ、さらに「頭取時代はよく会っていた。相談役時代も時々会いにきていたが、特別社友となってからは一度も会っていない」と答えたという。

 それを裏付ける出来事があった。筆者は下関医療センターの倫理・治験委員会の外部委員をしており、7月31日に開催された会議に出席した。車に同乗した妻は、大丸下関店1階の化粧品売り場で店員と話をしていたとき、ろの椅子に座りかける前にどっと倒れ込む音が聞こえ、その顔を見ると田中特別社友で、あとからついてきた妻が「あなたどうしたの。大丈夫」と抱きかかえる姿を偶然にも目撃。念のために店員に「田中さんでしょう」と聞くと「そうです」という答えが返ってきたという。これにより倒れこんだことが原因で足を痛め、下関医療センターに入院していた事実と符合することがわかった。

(つづく)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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