2024年04月26日( 金 )

木造×鉄骨造 の13階建ビルにハイブリッド耐震システム「木鋼組子(モッコウクミコ)」(中)

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(仮称)道玄坂一丁目計画

外観イメージ

 東急不動産は、(仮称)道玄坂一丁目計画への木鋼組子の採用にあたり、「本社のある渋谷ソラスタに隣接しており、目にとまりやすく企業姿勢を発信しやすい立地。そのため、正面部分に特徴のある外観のデザインがほしい状況だった。木鋼組子は、緑の力をオフィスに取り入れる当社の『Green Work Style Project』と親和性が高く、互いの相乗効果が期待できる」と判断したという。都心部で木造を使った建築として、東急不動産が初めて手がけるプロジェクトとなる。

 木材を生かす耐震構造では、鉄骨造の耐震要素として目にとまりやすい建物の正面部分にCLT壁を用いる方法もある。「CLTは高層建築でも使えるくらいの強度がある。しかし、壁の構造となり、ガラス窓を取りにくくなるため、オフィスの正面部分には使いにくい。木材は鉄骨ほど強度が高くはないが、木鋼組子は多くの木材をブレースに使うことで耐震性能を補っているため、開口部をしっかりと見せられる外観を実現できる」と前田建設工業・渡邉氏は話す。

 木鋼組子は建物外周部に配置することで、地震時の安定感をとくに高めることができるという。木鋼組子を採用する建物は外装材、仕上げ材などの資材を木造用に変えることなく利用できるため、さまざまな建物に応用しやすい。同計画は基本的にS造のため、S造用の外装材、仕上げ材を使用している。

 13階建ての同計画は、柱や梁などすべての構造材を木造にすると、多くのフロアで2時間耐火構造が必要となるために、木材の構造材を使っても柱や梁を現(あらわ)し()にできないケースも多い。「S造をベースに、木鋼組子を耐火被覆しなくてもいい耐震要素として使うことで、木材を現しにしやすい」(窪崎氏)といい、同計画では、木鋼組子のブレースで木材を用いたほか、13階建ての上部4層(3フロア、1時間耐火構造)の小梁や間柱に、木材で耐火被覆したハイブリッド集成材を採用した。ハイブリッド集成材はH鋼の周りを集成材が覆っているため、木材が現しになっていて、建物の外観や内部から木目を感じられる仕組みだ。

※現し:木造建築で、柱や梁などの構造材が見える状態で仕上げる手法 ^

 「これまでも、S造に鉄骨と木材の耐震要素を組み込む試みはあったが、木鋼組子は地震時の力でも破壊されにくく粘り強さが高いため、中高層建築でも木材の耐震要素を採用できるようになった。従来工法に比べて鉄骨量を低減することができ、木造化によるコストアップを一定程度抑える効果もある。さまざまな建物に応用ができる実用性の高い技術であり、今後も物件特性や事業性を踏まえて、木鋼組子の活用を検討していきたい」(東急不動産)。

位置図

(つづく)

【石井 ゆかり】

(前)
(後)

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