2024年04月20日( 土 )

重要なのは住民の理解と情報共有(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ
国立大学法人 九州大学
応用力学研究所 新エネルギー力学部門 風工学分野
准教授 内田 孝紀 氏

計画内容は適切か

 ――大和エネルギー(株)が唐津市と糸島市の行政界で進める「(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業」ですが、計画地では発電に求められる水準の風速は出ないとの声も聞かれます。そもそも計画は適切なものといえるのでしょうか。

 内田 まず唐津市に関してですが、市の主導で再生可能エネルギーによる産業振興、低炭素社会づくりを推進しており(※1)、再生可能エネルギーの導入に前向きな自治体です。エネルギー供給事業者からも、事業エリアとして注目されています。
※1:唐津市は2012年6月、「唐津市再生可能エネルギーの導入等による低炭素社会づくりの推進に関する条例」を制定。エネルギー自立型社会の実現に取り組んでいる。

 今回の「(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業」について、計画地としてそもそも適切なのかというご質問ですが、市の協力を得て、現地で風速・風向などのデータ計測を実施しました。その結果からいえば、風力発電事業の計画地として、決して不適切な場所ではありません。印象としても、良い風が吹く場所というのが所感です。

 もし問題点を挙げるとすれば、着工した際に風車の部材をどうやって現場に搬入するのかということです。現場に向かうまでの道路幅員は狭く、大型トレーラーが走行するのは困難だと思われます。当然、事業予定者の大和エネルギーは、仮に道路を拡幅した場合はこうなるというのを示したうえで必要書類を提出しているかと思われます。技術革新で輸送手段も多岐にわたりますので、一概にはいえませんが…。

 ――計画では、最大高さ159m、ローター直径117mのプロペラ型風力発電機(3,200~4,200kW)を8~10基設置する予定ですが、計画地344ha、計画出力3.2万kWに対して、適切な規模なのでしょうか。

 内田 日立製作所が風力発電機の生産から撤退して以降、風車の位置は地上から60m以上、最大出力は3.0MW以上のものが標準サイズになりつつあります。ただ、エネルギー取得量で考えると、ブレード(風車の羽根)のサイズが大きくなればなるほど取得量は増えますので「大きいものをより高い場所に」というのが、国際的には主流です。

 今回の計画に照らし合わせると、規模としては特段大きいというわけでも、小さいというわけでもありません。あえていうなら、3.0MWの風力発電機を10基並べるより、3.2MWよりも大きいものを5基設置した方が、費用対効果は高いと思います。

(つづく)

【代 源太朗】

(後)

関連記事