2024年03月28日( 木 )

菅首相任命拒否 日学法違反を糺す

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「菅内閣は御用メディアから学術会議会員の任命拒否とは直接関係のない同会議見直し論議を流布させて、この件を無視する構えを示しているが、任命拒否の理由は6名が政府に批判的な考えを持つ人物と判断したことによると推察されており、問題の本質は法律違反だ」と訴えた10月18日付の記事を紹介する。


10月28日(水)開催の政策連合総決起集会&松元ヒロさん公演の受付を行っている。
席数が限られているので、参加希望の方は早めにお申し込みを賜りたい。

開催時間は午後5時30分~午後8時45分、
場所は地下鉄メトロ新宿御苑駅出口から徒歩5分の場所にある四谷区民ホール
フライヤーはこちら
プログラム案はこちら

<第1部>
午後5時30分~午後6時45分
「政策連合で政権交代」決起集会

<第2部>
午後7時~午後8時30分
「松元ヒロさんオンステージ」

閉会あいさつ

のプログラムで開催する。
第1部はオンライン同時開催だが、第2部はオンライン開催を行わない。
主催は政策連合(オールジャパン平和と共生)

参加申し込みは、氏名、住所、電話番号を明記の上、
info@alljapan25.com
までメールでお願いしている。

お申し込み後、概ね1週間以内に返信のメールをお送りさせていただく予定。
松元ヒロさんの公演は現代日本の最高峰と言って差し支えない。
ぜひこの機会に松元ヒロさんのパフォーマンスをご観覧賜りたく思う。

菅首相が日本学術会議会員の任命を拒否した問題が一向に解決しない。
菅内閣は懸命に任命拒否問題を日本学術会議の在り方問題にすり替えようとしているが無理がある。
日本学術会議の在り方を論じたいなら大いに論じればよい。
しかし、その前に、任命拒否問題を適正に処理することが必要だ。
最大の問題は菅首相が法律違反行為を行ったこと。
しかも、問題は学問の自由に関わる重大性を帯びている。

日本学術会議法は会員の推薦と任命について次の定めを置いている。
第七条 2:会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

第十七条:日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

その運用について政府は、
1983年5月12日の参院文教委員会における中曽根康弘首相による
「政府が行うのは形式的任命にすぎません。」
同年11月24日の参院文教委員会における丹羽兵助総理府総務長官による
「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、その通りのかたちだけの任命をしていく。」
との答弁を示している。

このことから、日本学術会議が「優れた研究または業績がある科学者のうちから」の規定を遵守して会員候補を推薦する場合、内閣総理大臣はその候補者をその通りに任命しなければならない。

ところが、菅義偉首相は日本学術会議が推薦した105名の候補者のうち、6名について任命を拒否した。
この行為は上記の日本学術会議法の定めに反するものである。

菅義偉首相の違法行為が論議の対象になっている。
この違法な任命拒否行動の中核的役割を担ったのが杉田和博内閣官房副長官であると見られている。

杉田副長官は警察官僚出身の79歳の人物。
元文部科学事務次官の前川喜平氏は、次官在任中の2016年に文化功労者と文化勲章受章者を選考する「文化功労者選考分科会」の委員候補2人の「差し替え」を杉田氏から求められた事実を明らかにした。

そのうちの1人は「安全保障関連法に反対する学者の会」への参加を理由にしたもので、他の1人はメディアでの「政権を批判するような発言」を理由にしたものだったという。

今回の学術会議会員任命拒否事件において杉田副長官は、日本学術会議推薦の会員候補6人の任命拒否を菅義偉首相に「事前報告」したとされる。
政府に批判的な考えを持つ人物であると判断したことが任命拒否の理由になった、と推察される。

このような理由での任命拒否は明白な法律違反である。
野党は杉田副長官の参考人招致を求めている。
自民党は官房副長官の招致は「前例がない」として拒絶する構え。

立憲民主党の安住淳国対委員長は自民党の森山裕国対委員長に
「悪しき前例を踏襲することなく和田氏の国会招致に応じること」
を強く求めるべきだ。

森山国対委員長がゼロ回答を示し、安住氏が抵抗することなくその回答を受け入れるなら、糾弾されるべきは安住国対委員長ということになる。

日本学術会議には10億円の国費が投じられており、学術会議の会員が税金で優遇されているとの風説が流布されている。
学術会議に10億円の予算が計上されているのは事実だが、会員に対する報酬は2万円に満たない旅費などが中心のわずかなものだ。

諸外国でアカデミアに国費が投じられていることはないとの風説を流布した者もいる。
学術会議会員は会員を終えると学士院会員になり、年間250万円の報酬を死ぬまでもらうとテレビで発言した低レベル解説委員もいる。

すべてがでたらめ。
あたかも、日本学術会議に問題があるかのような「印象操作」が展開されている。
しかし、流布されている情報の多くがウソ=風説である。
ウソまで流布しなければならないところに、菅内閣側の苦しい現実がある。

日本学術会議法という法律が存在し、条文に会員推薦の方法と総理大臣による任命が明記されている。
そして、内閣総理大臣による任命は形式的なものであり、学術会議の推薦を拒否することはないとの政府答弁も確実に存在する。
従って、日本学術会議が推薦した105名の会員候補のうち、6名を任命拒否した行為は違法行為なのだ。

この法律違反問題を解決しなければならない。
現状では方法が1つしかない。
任命拒否を撤回して、6名の候補者を任命すること。
これ以外に問題を解決する方法はない。
そのうえで法律違反についての明確な責任処理が必要になる。

菅首相が105人の候補者リストの存在を知らず、推薦者名簿の99人を任命したのなら、105人の名簿から6名を消去した人物の責任が問われなければならない。
菅首相に99人の候補者リストと105人の候補者リストの2つが提出されて、99人を任命したなら、105人リストから6人を取り除き99人リストを作成した者と105人リストの提出を受けながら99人だけを任命した菅義偉首相の双方の責任が問われなければならない。
いずれにしても重大な法律違反事案である。

菅内閣は御用メディアから違法任命拒否問題とは直接関係のない学術会議見直し論議を流布させて、違法任命拒否問題を無視する構えを示している。
しかし、問題の本質は法律違反であり、しかもその内容が、政府を批判する学者の排除になっていることから、看過できない。
政府の横暴、暴走の防波堤の役割を担うのが憲法であり、法律であり、国会である。
政府が法律違反を押し通そうとしていることを国会が看過してよいわけがない。

メディアは本来、社会の木鐸として政府の横暴、暴走を批判し、世論を喚起する役割を担う。
そのメディアが社会の木鐸としての役割を放棄して、暴走政府の支援に回って
いることは慙愧に堪えない。
NHKは討論番組で「コロナ下における学校問題」ではなく「日本学術会議法違反任命拒否問題」を取り上げるべきだ。
民間放送の情報番組もこの違法任命拒否問題を正面から取り上げるべきである。

第2次世界大戦に際して、政府の間違った行動、政府の暴走を批判せず、権力の太鼓持ちになっていたことをメディアは反省したのではなかったのか
正しくない主張を、政府の応援をしていることをアピールするために懸命に発するさもしい人々が多いことが、この国の劣化を象徴している。

こうしたさもしい人々が大手を振るい、跳梁跋扈するなら、日本の没落はさらに加速することになるだろう。
事態を打開するには、総選挙で勝利するしかない。
選挙で勝利し、新しい政権を樹立する。
これが日本を没落から救い出す唯一の方法だ。

菅内閣を支持する国民は全体の25%しかいない。
25%の人々ははっきりと菅内閣を批判している。
残りの50%の人々が選挙に足を運ばないサイレント・マジョリティーだが、この人々が目を覚ませば、菅内閣打倒勢力が菅内閣支持の25%勢力を凌駕することは間違いない。

政権刷新は完全に手の届くところに存在する。
大いなる自信をもって取り組めば、日本政治の刷新は必ず実現できる。
この意識を共有するためにも10月28日の総決起集会にぜひご参加賜りたい。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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