2024年03月29日( 金 )

【凡学一生の優しい法律学】日本学術会議推薦無視事件(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

高橋洋一内閣官房参与の詭弁

1. 10月12日付「日本学術会議問題が今必要な議論の妨げ」との主張

 高橋氏は「『日本学術会議問題』が、いま本当に必要な議論の妨げになっている…!(『現代ビジネス』10月12日付)」のコラム(以下、コラム)を発表した翌10月13日に内閣官房参与に任命されたため、事実上、内閣官房参与の立場をもって日本学術会議(以下、学術会議)問題がほかの重要な議論の妨げとなっているとして、同問題の矮小化を図った。

 本事件を重大な政治問題と認識していなおらず、まともな学者であれば到底主張しない「詭弁の論述」のコラムを執筆する高橋氏が内閣官房参与に任命されるとは、極めて特異な人事と評価すべきだ。加えて、菅内閣の人事は目に余ると感じている。

2. コラムはまともな論述ではない

 コラムは支離滅裂な文章の羅列であり、筆者は「学術会議推薦無視事件」より重要で議論を急がなければならない問題が何であるかを把握することはできなかった。もっとも驚いたのは落語や漫談かと見まがう表現で書かれていることであり、詭弁を論じる以前に意味不明の文章であった。下記に、その記述を示す。

2. 落語か漫談かと見まがう表現

 しかし、先週の本コラムで、過去の経緯や欧米の実情を紹介している筆者からみれば、この一部マスコミの論調は笑うしかない。あえてわかりやすくいえば、次の通りだ。

 2003年当時、日本学術会議が行革の対象になると、
 日本学術会議 民営化だけは勘弁してほしい。その代わりに人事(任命権)は政府の裁量でいい。
 政府 今回は民営化しない。しかし10年以内に改革をせよ。
 日本学術会議 了解した。

 その後10年経つが、日本学術会議は改革しない。その一方で、復興増税提言、国際軍事研究阻止など国民にいいことをしないので、
 政府 10年以内の改革をせずに社会貢献もしていないので、人事(任命権)で裁量的に行わせてもらう。
 日本学術会議 法律違反の人事だ。
(『現代ビジネス』10月12日付)

3. 完全に「漫画のストーリー」

 上記の高橋氏の事実経過の記述は完全に「漫画のストーリー」であり、議論の対象となる証拠に基づいたではない。このような論述を平然と行う人が経済学者を名乗ってテレビに登場しているとは、報道の娯楽化にばかり傾くマスコミの節度のなさにも程がある。ただ面白いというのみで経済学者を名乗る「変人」を重宝するような報道人としての矜持のない姿を見ていると、マスコミの先行きが危ぶまれる。

4. 詐欺師か大法螺吹きの論述

 同論文には、詐欺師や大法螺吹きと明らかに同じ論法の記述がある。テレビでは瞬時に発言が消え去るため、視聴者があまり気づかないだろうが、文章で読むとその欺瞞性を明確に確認できる。下記に、その記述を示す。

菅首相がいま計画していること

 日本学術会議では、菅政権が強権的な人事を行っていると誤解した人も多かったかもしれない。マスコミ報道が、日本学術会議側の言い分ばかりを報道したからだ。

 しかし、先週の本コラム「問題だらけの「日本学術会議」は、今すぐ「民営化」するのが正解だ」を書いてから、与党幹部をはじめ各方面からの問い合わせが多くあった。
(『現代ビジネス』10月12日付)

 筆者は本連載で、上記の「学術会議を今すぐ民営化」という趣旨の高橋氏の論文を分析し評論しているおり、このコラムが独善と詭弁であり、菅総理大臣の「推薦無視」行為の違法性を無視した単なる暴論であることを知っている。

 そのため、筆者は「与党幹部をはじめ各方面からの問い合わせが多くあった」という記述が、多数の人々から高く評価されたといわんばかりの詐欺師の「思わせぶり」表現とまったく同じであると認識した。
 読者には本連載の記事でそれを確認していただきたい。

(了)

(3)
(5)

関連記事