2024年03月28日( 木 )

【凡学一生の優しい法律学】横行する同意詐取(追補)~日本学術会議委員推薦無視事件

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内閣による悪質な同意詐取

 世間を大いに騒がせている日本学術会議委員推薦無視事件においても、悪質な同意詐取の事例が公表された。この事例は内閣による同意詐取であるため、今後、重大な政治問題にならないのであれば野党の法的理解力はもはや「中学生以下」といえるもので、野党は国民の信頼を一層失うだろう。

 本事件が重大な政治問題となる理由は、この事件に対する内閣の行為には内閣法制局の後ろ盾が制度的に存在するため、被詐取者はまさか違法行為であるとは思わない状況下に置かれており、ほかに例がないほどに悪質性が高い点にある。つまり、官邸の違法犯罪行為に内閣法制局までが不作為的に加担しているのである。

 報道によれば、官邸は日本学術会議(以下、学術会議)の前々会長に改選人数を超える推薦人名簿の提出を求め、同前々会長は法的な問題を何も知らず官邸に求められるままに名簿を提出したという。

 このことは学術会議の推薦権を完全に侵害する違法行為であり、官邸が内閣に改選数をこえる推薦人名簿を提出するよう要求する権利を有していないことは明白である。これは学術会議の推薦権を部分的に否定する行為であるが、部分的であれ全体的であれ法的には同じ否定行為であり、そもそも官邸はそのような否定権限をもっていない。

 問題になっている学術会議委員6名の任命拒否と同質の違法行為であり、権限濫用行為である。学術会議や同会長の正当な業務執行を故意に妨害しており、完全な業務妨害罪に該当する。

 同意詐取は法律専門家による法的に無知な者を対象とした違法行為・犯罪行為であり、内閣が学術会議に対して行ったことは世界に恥ずべき事例であり、国民はこの不祥事を絶対にゆるしてはならない。

法令解釈の変更権をもたない内閣

 なお、この内閣の違法行為を正当な行為とする前提の下、「事前協議が必要」と論述をする外野の法律家も存在するが、推薦どおりに任命するのが総理大臣の義務であることは立法者意思を表す文言から素直に理解できることだ。この判断は今回の事件が起こるまでは政府の公式見解でもあった。

 内閣には法令解釈の変更権がないことは、内閣法制局設置法の内閣法制局の所轄事項の規定にも明確に示されている。内閣が国会の制定した法律を内閣の独自の立場で解釈を変更すれば、明らかな立法権の侵害となるため憲法違反となることは中学生にでも理解できる。

 この本質を理解している内閣法制局の担当者に野党議員が「解釈の変更をしたのか」と質疑することほどの「茶番劇」はない。今回明らかになった内閣の行為の事実こそ解釈の変更を前提とする行為であるため、質問すること自体、間が抜けており、解釈変更を示すこの事実を理由にして内閣の責任を問えばいい。

 野党議員は内閣の違法行為をただ声高に叫ぶだけしか能がないため、毎度おなじみの「茶番劇」となる。すべての野党議員が抗議の辞任をして見せ、補欠選挙で国民に真実を訴えればいい。そこまでしても国民が動かなければ、普段から野党議員の国民への情報提供や国政に関する報告に対する努力が足りなかったということで、一から出直せばよいだけのことだ。4年後の選挙では、野党が逆転できる可能性が生まれているはずである。

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