第一生命が詐欺容疑で『実録 頭取交替』登場の元社員を刑事告発 (24) 和歌山でも元営業員が金銭を不正取得
生命保険大手の第一生命(東京都千代田区)は10月30日、和歌山県の元営業社員の女性が、顧客の保険を無断で解約するなどして、5,000万円余りの貸付金や保険料をだまし取っていたと発表した。
~詐欺の内容について~
◆第一生命によると、金銭をだまし取っていたのは、和歌山支社阪和営業オフィス(和歌山市)に在籍していた、いわゆる「生保レディー」と呼ばれる50代の元女性社員。2016年から今年10月までのおよそ4年にわたって、少なくとも20人の顧客から計5,210万円をだまし取っていたという。
◆その手口は、第一生命の融資制度を悪用したものだ。「貸付」や解約手続きなどを顧客に無断で行い、顧客に対しては「誤った手続きで貸付金が口座に振り込まれてしまった」などと説明し、お金をだまし取っていた。また保険料として預かった現金をだまし取り、偽造した領収書を手渡すという不正も行っていた。
◆被害に遭った顧客から7月に第一生命に連絡があり、社内調査で発覚した。第一生命は営業社員を9月30日付で懲戒解雇し、和歌山県警に告発する準備を進めている。
社内調査に対し元営業社員は、「取った金は生活費に充てていた」と話している。第一生命は元営業社員が被害者に行った手続きを取り消し、保険契約を元に戻すとともに、元営業社員には不正に取得した金銭の返還を求めている。
~不正が新たに見つかった要因~

◆7月2日、顧客から第一生命に対し、「身に覚えのない貸し付けの通知が届いた」と相談があり、西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)に勤務していた80代の女性元営業社員(特別調査役)を調査すると、顧客に「架空の金融取引をもちかけて不正に資金を集めていた」ことが判明。
・第一生命は10月2日、「金融詐欺の被害を受けた客は少なくとも21人で、被害額は計19億円。同社は山口県警周南署に詐欺容疑で刑事告発した」と発表。この事件をめぐり、金融庁は保険業法に基づく報告徴求命令を出した。
その特別調査役とは、筆者の著書である『実録 頭取交替』(講談社)に登場する第五生命の山上正代こと第一生命の正下文子(89歳)である。この正下文子の金融詐欺を調査している過程で、新たに和歌山の元女性社員の詐欺事件が発覚したのだ。
<まとめ>
第一生命のホームページには「お客さまの“一生涯のパートナー”であり続けるために」という記載とともに、日本のMDRT会員(業績優績者)の名前が掲載されている。185名(女性178名、男性7名)のなかに、和歌山支社所属の営業社員の名はなかった。第一生命関係者の心中を察するに、ほっと胸を撫でおろしているであろうことは想像に難くない。
第一生命は「お客さまならびに関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くおわび申し上げます」とコメントしている。そうであれば、被害者に対して被害金全額を補償することこそが「お詫び」の証ではないだろうか。
【資料】
10月30日に第一生命HPで発表されたプレスリリース
「元営業員による契約者貸付金等の不正取得について」
(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】