2024年04月26日( 金 )

AIチップの熾烈な開発競争(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 本格的なAI時代の到来に向けて、AIチップ開発の需要が高まっている。自動運転や生産性向上のための目玉として喧伝されているIoTが本格的に普及するためには、AIチップを実用化することが必要だ。データ処理能力が高まるAIチップが開発されると生活や社会が大きく変化し、あらゆる分野で企業の競争力を高めることになるだろう。

需要が高まるAIチップ開発

 インターネットの発達により、通信するデータの量が爆発的に増加したことによって、膨大なデータを処理するための専用チップ開発の需要が高まっている。

 AIは、ディープラーニングの技術が登場して以来、画像認識や言語認識といったパターン認識の活用やさまざまな意思決定に活用され始めている。AIは収集、蓄積したビッグデータを基にコンピューターを用いて学習、推論することにより成り立っているが、現在のAIはソフトウェアを用いて膨大なデータ処理を行っているため、その処理能力が十分な水準に達していないことが課題になっている。

 AIチップは、入力された順番通りに情報が処理される既存のCPUとは異なり、人の脳のように多くの情報や複雑な演算などを並列、同時に処理できる能力をもつ。既存のチップより、演算処理のスピードが速く、膨大なデータの処理が得意であるため、ビッグデータの処理に適している。

データ送受信時のタイムラグを解消

 現在のAIはビッグデータを基に回答を導くディープマイニングが中心だが、その際にもっとも大事な問題は、データ処理をどこで行うかということだ。

 自動運転の場合を例に挙げると、自動車に搭載されたセンサーから収集されたデータはクラウドに送信され、クラウドでAIを用いて処理を行い、得られた結果は再び自動車に送信される。ところが、クラウドは自動車から離れた場所にあるため、データ送受信時にタイムラグが発生する。

 このようなデメリットを解消する方法が、最近話題となっている現場側でデータを処理するエッジコンピューティングである。現場側のエッジコンピューターを用いてAI処理することで、送受信によるタイムロスがなくなるため、リアルタイムに近い処理が可能になる。

 また、もう1つのデメリット解消方法は、スマホなどの携帯端末上で処理することだ。スマホに搭載されているさまざまなアプリを用いてAI処理することで、機能の向上を図ることができる。

 AIチップとは、このようなAI処理に特化した半導体で、これまでのソフトウェアによるデータ処理の限界を乗り越えることができると考えられている。

 AIチップには、大きく分けると学習用と推論用の2種類がある。学習用のAIチップはGPUで標準化されつつある一方、推論用のAIチップは、GPU以外にもSoCやFPGA、ASICなどさまざまな種類があり、標準化に向けて各企業が競っている状況だ。

 AIチップの始まりは、車載コンピューターに搭載されるGPUにAIを処理する機能を付け加えたもので、世界的なGPU企業であるNVIDIA(エヌビディア)が、この分野のトップを走っている。

(つづく)

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