第一生命が詐欺容疑で『実録 頭取交替』登場の元社員を刑事告発 (25)下関を去った特別社友
写真を見ていただきたい。10月31日午後、山口銀行の田中耕三特別社友が頭取時代から28年入居していた社宅である。引っ越しの準備が整ったかのように格子越しに段ボールが見える。
本人は病院に入院しており不在で、娘ら家族が引っ越しの準備をしていた。11月1日(日)までには引き払い、家の鍵を山口銀行に戻したことは間違いないようだ。
◆そのことを確認するため11月2日午前9時前に山口銀行の秘書室に電話をすると、「社宅を出られました」との回答があった。筆者が「どこに移ったのですか」と問うと、「それはご家族にお任せしています」との返事であった。続いて、筆者が「山口銀行は田中耕三氏を新設の特別社友としたプレスリリースをしており、私人ではなくまだ公人ですよ。それは銀行の正式回答なのですね」と念を押すと、「待ってください。相談してご回答させていただきます」との返事があった。
◆1時間後の午前10時頃に電話があり、「どこに移るかは聞いていますが、ご家族からの申し出もあり、場所はお答えできません」との回答。
・筆者がすかさず「社宅を出るといったのは田中特別社友側からですか」と問うと、「双方の合意です」との回答。
・さらに「田中耕三特別社友の辞任は山口銀行側から申し出たのですか」と問うと、「社宅を出たのは双方の合意であり、今まだ特別社友であるが、特別社友から外れることも双方の合意によるものです」との正式回答を受けた。

【表1】を見ていただきたい。山口銀行歴代頭取(戦後)の推移表である。
~この表から見えるもの~
◆三和銀行から天下った初代の弘津次郎氏の頭取在任は5年。しかし同じく三和銀行出身で2代目の布浦眞作の頭取在任は25年。
・3代目の伊村光頭取からプロパー出身者となった。頭取在任は18年。
・4代目は田中耕三頭取で在任は10年であるが、相談役15年をあわせると計25年。
・5代目は田原鐡之助頭取で在任は2年。
・6代目は福田浩一頭取で在任は12年。
・7代目は吉村猛頭取で在任は2年。山口FG・山口銀行会長として現任で、グループ全体の長となっている。
・8代目の神田一成頭取は2年で現任。
◆全体的に、頭取の在任期間が長いことがわかるが、目に付くのは、五代目の田原鉄之助頭取の2年。この時の頭取交代劇を題材にしたのが、筆者の『実録 頭取交替』(講談社)である。
<まとめ>
田中耕三は取締役ではなく肩書はただの相談役であったが毎日出勤。その待遇は(1)役員並みの報酬、(2)運転手付きの車、(3)個室の役員室、(4)社宅貸与など、役付き役員以上の厚遇を受けていたという。実態は影の頭取として25年間、四半世紀の長きにわたり、山口FGの人事権を掌握していたことになる。今回の田中特別社友に対する山口銀行の対応などから、多くの読者は「山口FGは田中耕三特別社友のトラウマから逃げ切れていない」と感じるのではないだろうか。
(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】