2024年04月24日( 水 )

豊富な地域資源の活用で再興を図る大牟田市の未来は――(6)

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中心部再開発や産業団地、市庁舎の行方は――

 中長期に向けては、前述のマスタープランなどに沿って都市計画が進められていく予定だが、市内では現在進行形でいくつかの大規模な開発案件を抱えている。

再開発の動向が注目される西鉄「新栄町駅」前

 その筆頭が「新栄町駅前地区市街地再開発事業」だ。同再開発事業は、大牟田井筒屋やサンリブ大牟田店(11年2月閉店)などの閉店にともない活気が失われている西鉄新栄町駅前に、再開発によって新たな魅力を取り込むことでにぎわいを取り戻そうというもので、09年末から再開発準備会(14年4月準備組合へ移行)が設立され、市が推進計画などを策定。約2haの敷地において駅舎建替えや駅前広場整備を行うほか、ホテルや分譲マンション、高齢者住宅、駐車場などを建設してにぎわいを創出する計画が立てられ、総事業費は16年3月時点で約118億8,000万円にも上る一大プロジェクトだった。

 だが、再開発準備組合と建設業務代行者1社との間で締結されていた基本協定が解除されたことにより、計画はいったんストップ。現在は民間事業者と市、再開発準備組合との間で協議を重ねながら、事業再構築に向けての検討が行われている段階だ。事業再開がいつになるかのメドはまだ立っていないものの、同再開発事業は中心市街地活性化に寄与する重要な事業と位置付けられており、今後の動向には市内外からの注目が集まっている。

 市内で、新たな産業団地を造成する計画もある。

広域交流を促進する「有明海沿岸道路」

 現在進められている「(仮称)新大牟田駅南側産業団地整備事業」は、大牟田テクノパークなどの市内の内陸型工業団地が完売していることで、企業誘致において内陸型を希望する企業への対応ができない状況を打破すべく、新大牟田駅南側の農用地(約8ha)を内陸型産業団地として新たに造成していくもの。隣接する新大牟田駅との利便性を活かした企業誘致を進めることで新たな雇用の場の創出を見込むほか、併せて駅周辺に新たに「賑わい交流エリア」を整備し、飲食店や店舗、宿泊施設など商業・サービス機能を充実させ、駅を中心とした新たな交流拠点にしていきたい考えだ。
 こちらは現在、地権者の合意形成や各種法手続き、用地買収などを進めているところで、その後の造成工事などを経て整備完了は23年度を見込んでいる。

 「(仮称)総合体育館」建設の計画も進んでいる。これは、74年9月に開設され、現在は老朽化が進行するほか耐震性の面で問題を抱えている現行の市民体育館を建て替えるもの。市民のスポーツ活動や健康推進の拠点施設としての役割だけでなく、豪雨災害を受けて防災拠点としての機能も備えていく。すでに19年度中に基本方針が決定され、20年度に基本設計、21年度に事業者公募を行い、22年度着工し、23年度に新たな総合体育館が完成する予定だ。

 ほかに現在、市役所本庁舎の今後の取り扱いについて、市民の間で意見が割れている。現在の大牟田市役所本館は1934年10月に着工し、当時の建設技術の粋を結集しながら1年半の工期をかけて36年3月に竣工した。施工を手がけたのは、当時は三池郡高田村(現・みやま市)に本社を構えていた老舗の建設会社である(株)柿原組(福岡市中央区)。大牟田市の都心部のほとんどが焦土と化した第二次世界大戦の戦火にも耐え、大牟田駅前の一等地に屹立する、まちのシンボルといえる建物だ。2005年12月には、国の登録有形文化財にも登録された。

 しかし一方で、築80年以上が経過していることで老朽化も進行。16年4月の熊本地震をきっかけに庁舎の耐震診断を実施したところ、本館を含む複数の庁舎で現行の耐震基準を満たしていないことがわかった。また、建物の狭隘化にともない増改築などを繰り返した結果、庁舎が本館以外に新館や企業局、北別館、南別館、保健センターなどに分散しており、移動の際の動線がわかりづらくバリアフリー化も十分でないなどの利便性の観点で、市民からの不満の声も上がっていた。

建替えか保存かで市民の意見が割れている「大牟田市役所本館」

 こうした事態に対処すべく、市民アンケートや庁舎整備検討委員会(附属機関)での協議を経て、市は19年2月に現在地で市庁舎を解体して建て替える基本方針案を出した。だが、一部の市民団体の反対や市議会からの庁舎整備関連議案の修正および否決、さらに市長交代などから20年2月に再び市民アンケートが行われた結果、基本方針案の再検討が決定。今後、新たな基本方針案の策定に向け、調査・検討に取り組むこととしている。

  

 三池炭鉱および石炭化学産業の隆盛・衰退とともに栄枯盛衰の歴史を歩んできた大牟田市だが、閉山から四半世紀近くが経とうとしているなか、古いイメージからの脱皮を図りながら、新たなまちづくりを進めている。化学産業や環境・リサイクル産業分野を中心とした高い技術力を有した市内企業の存在に、充実した交通インフラ、医療・福祉・教育環境の充実による住みやすさなど、ポテンシャルは高い。
 これらの地域資源を生かしつつ、都市整備や再開発などによって新旧の良さを融合させた“新・大牟田市”が、そう遠くない将来に誕生することを期待したい。

(了)

【坂田 憲治】


大牟田の未来について

壽海運(株) 代表取締役社長 板床 定男 氏

 当社は世界に向けた海運業として、大牟田の発展とともに歩んでまいりました。大牟田の未来が「笑顔が満ちあふれる素晴らしいまち」であれるように、魅力あるまちづくりの実現に向け、企業活動を続けてまいりたいと思います。
 私たちの企業活動が大牟田の未来の礎となれるよう、今後ともさらなる発展を目指してまいります。

信号電材(株) 代表取締役社長 糸永 康平 氏

 「経営活動を通して人を創り叡智を結集し、安全・安心のものづくり技術で社会に貢献する」が経営理念です。交通信号機材において創業者の精神「世に資するものをつくり続けて」を念頭に、当社独自の製品開発に邁進してまいりました。
 これからも大牟田への貢献と当社のさらなる成長を目指してまいります。

白石自動車(有) 代表取締役 白石 政嗣 氏

 石炭とともに発展してきた大牟田市は、これにともなうさまざまな産業が創出され、産業都市として大きく発展をしてまいりました。
 九州の中心にある大牟田は、交通インフラも整っており、我が社の物流はそのインフラとともに、さまざまなサービスを提供しています。今後も大牟田の活性化が我が社の発展につながることと信じ、これからも邁進してまいります。

(株)鉄万 代表取締役 永松 均 氏

 これまでの輝かしい伝統を重んじつつ、激変する世界の流れとともに大牟田は進んできました。産業都市大牟田でリサイクル業を経営する我が社も、大牟田とともに成長させていただきました。
 今後も大牟田の経済がアグレッシブに、かつ一丸となって力強く突き進み、大牟田市と両輪となって、幸せな大牟田をつくってまいりたいと思います。

(株)大塚食品 代表取締役会長 大塚 力久 氏

 1973年から「きのこ」づくりを始めて、「ほんもので高品質なきのこづくり」にこだわり、これからも安心安全な品質管理の下、あらゆる角度から「ほんもの」づくりを追求し、皆さまに健康で豊かな食生活を提案できる企業を目指してまいります。
 そして、大牟田市に本社を置く食品メーカーとして、大牟田がさらに魅力的なまちとなるよう、一緒に進んでまいります。

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