2022年06月30日( 木 )
by データ・マックス

第一生命が詐欺容疑で『実録 頭取交替』登場の元社員を刑事告発 (28)田中特別社友のトラウマから逃げられない山口金融グループの実態(3)

『実録 頭取交替』では、明智和男 (勝原一明) 会長は病気のため経営会議および臨時決算役員会議を欠席したことになっている。しかし、実際には入院中の身でありながら両方の会議に出席していたこと、また甲羅万蔵(田中耕三)相談役が取締役会議にもオブザーバーとして出席するストーリーとなっているが、実際は役員ではないため出席していないことを補記しておきたい。あくまでも「事実は小説より奇なり」と思って、下記の『実録 頭取交替』の頭取更迭のストーリーを読んでいただきたい(以下、登場人物の名前ではなく実名)。

<頭取更迭の舞台裏>
 2004年5月21日(金)の午前9時から田原頭取を議長とする経営会議が開催された。04年3月期の決算などについては問題なく、全員が賛成。しかし、自身の再選を提案した田原頭取に対して、更迭の対案が提出され6対5の賛成多数で可決されたため、午後に開催される臨時決算取締役会議の議案として上程することが決まった。

当時本店にいた事情通が、「経営会議で任期を迎える田原頭取を更迭するには過半数の賛成が必要条件となる。田中相談役の指示を受け、5月初旬に開催された定例取締役会議の前後に、組合出身の複数の役員が田中相談役室に出入りするのを見かけたが、そのときは何も思わなかった。しかし、経営会議・臨時決算取締役会議が開催される2~3日前から田原頭取更迭の動きが頻繁に見られるようになった。田中相談役が経営会議にオブザーバーとして出席した裏には、6対5の過半数で可決されるのを自分の目で見届けることがあったのでないか」と、寂しく語った言葉が思い出される。

<いざ鎌倉~臨時決算取締役会議>
 【表1】を見ていただきたい。経営会議に続き午後1時から臨時決算取締役会議が開催された。臨時決算取締役会議に出席した役員の経歴と裁決表である。

~この表から見えるもの~
◆04年3月期の決算に関する議案はすべて滞りなく賛成多数で可決された。
◆田原頭取は役員人事案を提出。任期を迎える取締役の再任候補として、田原鐡之助・西原克彦・瀧本博志・青野徹郎・加藤敏雄・井上秀則・高橋哲彦・福田浩一の8名と新任取締役候補として新谷和久本店営業部長の9名を指名した。それに対して広田英夫筆頭専務から田原頭取罷免の動議が提出されたのだ。
◆守旧派は9名。従業員組合の委員長・副委員長・書記長出身者が7名。田中相談役と同じ慶応卒の勝原会長と福田浩一取締役の2名。福田氏を頭取に引き上げるために、組合出身の取締役7名が組織的に行動したのがわかる。
 このうち、野坂文雄取締役福岡支店長は03年5月に田原頭取の指名を受けて取締役に就任したが、恩ある人に弓を引いている。
◆改革派は田原頭取・桑原専務・浜崎・青野・井上・高橋取締役の6名。当事者である筆者の浜崎は午前中に開催された経営会議のメンバーではないため田原頭取罷免の決議が行われたことを知らなかったが、左右を守旧派に挟まれている円卓会議場で、田原頭取罷免の動議に反対したことを今でも鮮明に覚えている。
◆採決の結果は明らかである。議長の勝原一明会長は棄権したが、守旧派8人に対して改革派は6名。過半数の賛成で田原頭取の罷免が決議され、新任の取締役に財満寛萩支店長兼浜崎支店長が選任された。財満支店長を取締役に推挙したのは田中相談役であり、その裏には第一生命保険の正下文代の推薦があったためといわれる。
◆外部の非常勤監査役である明治安田生命の金子亮太郎社長が重要な臨時決算役員会議を欠席したのは、田中相談役が動いたためだと見られている。

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<まとめ>
 この頭取交代劇を仕組んだのは、頭取を5期10年務め「山銀のドン」といわれた田中耕三相談役である。その後の15年間も相談役でありながら、「影の頭取」として実権を握っていたという。今は特別社友となっているが、山口金融グループは、今後も「頭取交代劇」を演出した田中相談役の「トラウマ」から逃げられない状況が続くことになりそうだ。

(つづく)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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