訪問調剤の社会インフラ構築で地域包括ケア実現を後押し(前)
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HYUGA PRIMARY CARE(株) 代表取締役 黒木 哲史 氏
――訪問調剤を始めたきっかけは。
黒木 2008年1月に、1店舗目となる「きらり薬局太宰府店」を開業しました。独立前、製薬メーカーでMR(医療情報担当者)をしていたころ、処方箋の多い大病院の門前に構える薬局の多さ、立地に依存した薬局の在り方に疑問を抱き、薬剤師という専門性をより発揮できる経営をしたいと思っていました。また、高齢化社会において在宅医療(※)の必要性を感じていましたので、薬剤師が患者さまの自宅などを訪問し、薬の管理や服薬指導を行う「訪問調剤」を始めました。
※:在宅医療とは、医師などの専門職が患者の自宅や介護施設などを訪ね、終末期の緩和ケアなどを提供するサービス。訪問診療、訪問調剤、訪問歯科、訪問リハビリテーションなどがあり、地域包括ケアシステム構築における重要な役割として国が推進している。 ^
国が地域包括ケアシステムの実現に向けての取り組みを進めるなか、病院のベッド数や入院患者の在院日数が減少傾向にあり、その受け皿として介護施設が増えていくという目算でそちらに舵を切ろうと考え、介護施設やケアマネージャーや在宅医へ積極的な営業活動を行ったことで、開業して2年目から処方箋が増え始めました。いわゆる外来だけでない、大手調剤薬局が行っていなかった在宅医療の分野への取り組みが継続的な成長につながり、今では九州と首都圏に33店舗を展開し、訪問調剤による売上は全体の6割を占めています。
――昨年よりボランタリー事業を開始されています。
黒木 当社の経営理念でもある「患者さんが24時間365日、自宅で安心して療養できる社会インフラを創る」――これは、地域包括ケアシステムの実現に向けても必須なものと考えます。ただ、24時間365日いつでも薬を届けられる社会インフラの構築は、当社だけでは全国規模の拡大は現実的に難しい。そこで、ほかの薬局と連携するためのボランタリー事業を始めることにしました。加盟する薬局には当社の培ってきた訪問調剤のノウハウを提供しますが、屋号などは変えずにこれまで通り営業してもらいます。加えて、薬を共同購入し、大量に仕入れることで調達コストを抑えることができます。
開始から1年間で約350店舗に加盟していただいています。個人薬局にも取り組んでもらえるよう、オンコールの待機応対や臨時の派遣など、当社の薬剤師がフォローする仕組みにしています。このボランタリー事業は、まだまだ寡占化が進んでいない薬局業界において、地方の小さな薬局を守ることにもつながると思っています。人との関わりが深い医療においては地域ごとの慣習がありますので、もともとある馴染みの薬局・薬剤師が対応するほうが良いですし、患者さまも安心して薬を受け取ることができます。
(つづく)
【松本 悠子】
<COMPANY INFORMATION>
ヒュウガプライマリーケア(株)
代 表:黒木 哲史
所在地:福岡県春日市春日原北町2-2-1
設 立:2008年1月
TEL:092-558-2120
URL:https://kirari3.com
<プロフィール>
黒木 哲史(くろぎ・てつじ)
1978年宮崎市生まれ。第一薬科大学卒。調剤薬局での勤務、大手製薬会社のMRなどを経て、2008年に独立開業。現在では福岡・佐賀・東京・千葉・神奈川で33店舗の「きらり薬局」を展開している。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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