2024年04月26日( 金 )

サムスン、イメージセンサー1位のソニーの牙城に挑戦(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 「第4次産業革命の目」と呼ばれるイメージセンサーは、スマートフォンの普及により市場が急激に拡大した。イメージセンサーの需要は今後、自動運転、ドローン、産業機器にも拡大すると予想されており、イメージセンサー市場への注目が格段に高まっている。

 イメージセンサーはカメラなどで「目の網膜」の役割をはたし、カメラのレンズを通って入ってきた光をデジタル信号に変換する半導体である。半導体市場において、イメージセンサーはメモリやロジック半導体と肩を並べるほど、大きな市場を形成している。

 イメージセンサーの需要をけん引しているのは、その市場の8割を占めるスマートフォン向けのニーズだ。市場で圧倒的なトップシェアを誇るソニーのイメージセンサーは、アップルの「iPhone」やHUAWEI(ファーウェイ)の製品に採用されており、ソニーはイメージセンサー市場においてシェアのみでなく、技術的にもリードしている。

 東京商工リサーチ(TSR)の調査によると、CMOSイメージセンサー(シーモスイメージセンサー)の市場規模は2020年に197億ドル、24年には270億ドルに成長すると見込まれている。このような成長が予測される要因としては、1台のスマートフォンに3個以上のイメージセンサーが搭載される「多眼化」や、自動運転車へのイメージセンサー搭載の拡大などが上がっている。

 このようにソニーの独壇場といっても過言ではないイメージセンサー市場で、サムスンが最近シェアを伸ばしており、業界の注目が集まっている。最近では、1位のソニーと2位のサムスンの市場シェアの差がことのほか縮小していることが明らかになった。

 イギリスの市場調査会社Omdia(オムディア)によると、昨年の市場シェア(売上高基準)は、ソニーが53.5%、サムスンが18.1%であったが、今年の第1四半期にはソニーが42.5%となり、サムスンは21.7%を記録し、半年ぶりに両社のシェアの格差が35.4%から20.8%に縮小した。その要因は、米国政府がソニーのイメージセンサーの販売先の2割を占めていたHUAWEIに制裁を行ったことと、コロナ禍により大きな影響を受けたことであると推測されている。

 日経新聞の報道によると、ソニーのイメージセンサー事業の今期の営業利益は、前期比で45%減少すると予想され、加えて今後の先行きも不透明であり、ソニーの独走態勢が揺らぐこともあり得ると指摘されている。

 一方、ソニーの後を追うサムスンは、02年にイメージセンサーの量産を開始。メモリ事業では世界トップシェアを誇るものの、イメージセンサー事業ではソニーに遠くおよばなかった。しかし、サムスンは市場の変化が激しいメモリ分野のみでなく、市場が安定している非メモリ半導体分野で世界のトップになるという目標を掲げてまい進しており、なかでも、もっとも計画を実現できる可能性が高いイメージセンサー市場に狙いを定め、注力している。

 サムスンはその結果、昨年11月に世界初の高画質である0.8㎛の大きさのピクセルで1億800万画素の製品「アイソセルブライトHMX」を出荷した。また、サムスンは既存のメモリ生産工場をイメージセンサー生産工場に転換することも進め、イメージセンサー事業に傾注している。

 サムスンは中国のシャオミ、Vivo(ヴィーヴォ)などにも、イメージセンサーを供給できるようになったことに留まらず、今後は高画質な製品を武器にして、顧客拡大を図っていく計画だ。

(つづく)

(後)

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